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Channel: 馬医者残日録
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ひどい難産

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今年は難産が多い。

それも特別ひどいのが多いように思う。

例年、1-2頭しか帝王切開しない。

それを去年は8頭もやった。

今年は、すでに7頭。

4月の出産が最も多いので、このペースで行くと10頭を超えるかもしれない。

雪が少なく運動量は多かったのだろうと思う。

しかし、暖冬で胎仔が大きいのだろうか?

            -

夜中1時。

難産の依頼。

11時半に分娩が始まり、おかしいので獣医さんを呼んで、12時半からやってみたが、

頭頂部から来ていて、両腕節も屈曲している、とのこと。

ひどいようなので他の当番獣医師も呼び、研修の先生も呼ぶ。

来院して、全身麻酔の用意ができるあいだ、枠場に入れて手を入れてみるが、両腕節のそばに蹄も触る。

後肢も来てしまっている。

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帝王切開するつもりがあるか牧場に訊く。

家畜共済非加入の牧場なので、高額診療になる。

帝王切開するつもりはない。との回答。

            -

子宮弛緩剤を投与する。

全身麻酔して後肢を吊り上げ、潤滑剤を入れて、顔にチェーンをかけて引張ってもらいながらおでこを押す。1:50

それで鼻っ面が出てきた。

片方の腕節は他の獣医師がつかんで伸ばした。

もう片方は、中手骨にチェーンをかけて引張ってもらいながら、腕節を押して、それで届くようになった蹄から別なチェーンをかけて引張ってもらい伸ばした。

後肢をできるだけ押し込んでおいて、あとは引張る。

子馬の腰まで出てきたが、あとは男手4人で引張っても出ない。

子馬の胸椎の最後の方で切胎した。2:50

しかし、片方の後肢しか触れない。

もう片方は産道の外に何かの壁越しに触る。

子宮が破れて外へ出ているのかもしれない。

あきらめることにした。

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解剖場で開けてみる。

子馬の左後肢は画面の上、産道へ出ている。

子宮は、母馬の後から見て反時計回りに180°捻れている。

子馬の右後肢はその捻れた子宮を突き破らんばかりに押して、突き出している。

・・・・もし、出せるとしたら、胎仔を捻って、子宮を時計周りに反転させ、右後肢をなんとか引っ張り出して、両後肢を牽引して娩出させるしかない。

最初に推察したように、帝王切開の適応だったひどい難産だったと思う。

               //////////

先日、遠方からお客様がみえたので、うちの家族と馬に乗りに行った。

海が見えるトレッキングコース。

楽しんでもらえたようで良かった。          

 


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