この1歳馬、どうやら他の馬に蹴られたらしい。
肘の骨折部の皮膚にわずかな傷があった。
2月生まれで410kgある大きな1歳だった。
当歳馬の尺骨骨折は生産地では毎年のようにお目にかかる。
変位していなければ、温存で大丈夫なことが多い。
しかし、馬が大きくなると上腕三頭筋の牽引も強力になり、立っている時間も長くなる。
当歳馬の尺骨骨折が、温存でも手術でも治りやすいからと言って、あまく見るとたいへんなことになる。
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9孔のナローLCPを使うことにした。
ナローのDCPの8孔・9孔が在庫がなかったのだ。
そして、DCP固定よりLCP固定の方が強度に優れている。
頑強な固定ができれば、早く痛みもとれるはず。
近位部に3本。遠位部に3本。そして骨折線を貫くように3本screwを入れるよう考えた。
骨折線を貫くscrewはlag法でいれても良いが、position screwとして入れても良い。
プレートの1箇所に力がかかるのを分散してくれる、はず。
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近位から3つ目のscrew holeに5.5mm皮質骨screwを入れた、が完全には締めない。
遠位から3つ目のscrew holeに4.5mm皮質骨screwを入れて、compressionをかけた。
近位部は外側へ変位していたのだが、外から押し付けておいてcompressionをかけたら、うまく密着してくれた。
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骨折線を貫くように5.5mm皮質骨screwを入れた。
あとはLocking Head Screwを4本入れた。
尺骨骨折のプレート固定では、とくにLCPにLHSを使う場合は、screwが尺骨からはみ出さないか注意が必要。
そして、7ヶ月齢を過ぎていたら橈骨の尾側皮質をscrewが貫いていて構わない。
しかし、橈骨の頭側皮質にはドリル孔を開けない方が良い。
橈骨の強度が落ちてしまう。
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成馬(この馬は1歳だが)の上腕三頭筋の牽引力は強大。
ナロープレートにその力が繰り返しかかると勤続金属疲労で折れてしまう。
骨折の形状にもよるが、プレートの破損を防ぐ固定が必要。
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重機でカシワ林の中に造られた切通し道。
このあたりの山が、火山灰地でできていることがわかる。
そして、大きな樹がならんだ林でも、樹も笹もわずかな表土だけで生きていることが見て取れる。
削っちまったら、簡単には再生しない。