膀胱破裂や、結腸捻転で、高カリウム血症に遭遇するときがある。
非常に危険な状態なので、対応方法について知っておく必要がある。
2016年のAAEPで、高カリウム血症の治療について総括している講演があった。
以下は、その抄録。
講演者は、Langdon Fielding獣医師。
カリフォルニアの馬獣医師のようだ。
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Introduction
高カリウム血症は生命の危険があるカリウムの混乱で、成馬にも子馬にも起こりうる。
もし異常が重度であれば野外で即時的治療を始めるべきだ。
他の動物での研究では馬の高カリウム血症で推奨されていたいくつかの治療は、以前に信じられていたほど効果的ではないかもしれない。
馬の臨床家は、高カリウム血症の治療に、往診先でも病院内でも使うことができるこれらの新しい治療のアルゴリズム(問題解決のための段階的手法;hig注)について知るべきだ。
馬の高カリウム血症には、2つの主な生理学的原因がある。
1)体からカリウムを排泄する利尿システムの破綻、そして
2)細胞内から細胞外液へのカリウムの移動、である。
成馬では高カリウム血症は、無尿性腎不全、高カリウム周期性麻痺(HYPP)、泌尿器系の破裂(膀胱、尿管、尿道)、大量の細胞破壊(横紋筋融解症あるいは溶血)で起こりうる。
子馬では、無尿性腎不全と泌尿器系の破裂がもっともよくある原因である。
しかし、細胞融解にも遭遇することがある。
高カリウム血症は基礎にある状態の経歴、臨床症状の発現、あるいは検査室での確証にもとづいて疑われるかもしれない。
カリウムの測定は保存や周囲の気温によって影響を受けることがあり、それゆえに予想外の結果は確認しなければならない。
高カリウム血症の臨床症状は、軽いが、典型的な筋力低下を示しているかもしれない。
心電図の変化は血漿カリウム濃度が6.2mmol/l以上になっていると現れるかもしれない。
それは、1)高い、あるいは尖ったT波、2)平坦なP波、3)QRSの延長、4)心停止が起こりうる。
心電図の変化は高カリウム血症でいつも起こるとは限らず、それがないからと言って診断除外に使うべきではない。
もし、高カリウム血症が履歴(HYPP状態、腎不全の経歴)、臨床症状、あるいは検査結果から疑われたら、すぐに治療を始めるべきだ。
中には(例えばHYPP)往診先で解決できる症例もあり、一方それ以外の症例では集中治療ができるところへ輸送する前の安定のために行うことになる。
高カリウム血症ではわずかに改善しておくことさえ命を救うことにつながる。
この文章の目的は、高カリウム血症への治療のアプローチについて述べ、馬の臨床にかかわる最近の変化に焦点を合わせることである。
to be continued
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ひどい高カリウム血症は、不整脈や心停止につながるので、すぐに処置しなければならない状態だ。
また、筋力の低下も引き起こすので、麻酔覚醒起立時の事故の要因にもなりうる。
補正方法を知っておかなければならないが、かつて信じられていた方法で否定されつつあるものもある。
AAEPでの講演の抄録を全訳しておきたい。
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きのうは北海道獣医師会代議委員会。
耐震基準を満たしていない建替えが必要な獣医師会館にオッサンを通り越してジイサンになりかけているセンセイたちが詰め込まれてイインカイ;笑
不快指数、高い。
かつて会員ひとりひとりからも寄付を集めて、現在の北海道獣医師会館を建設した先人たちには驚嘆する。
右肩上がりの時代だったからできたのだろうな。
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早朝。
カシワの葉がひろがって、雑木林は暗くなった。
今日は残っている薪を割ってしまおうか。