町の研修センターは取り壊しが始まっている。
昭和51年(1976)の開所なので、築44年目になるわけだ。
途中、町の判断で閉鎖されていた期間が数年ある。
以降はNOSAIが管理委託されて、補修とリフォームをしながら使ってきた。
木造モルタル2階建て、一部セラミック仕様、という建物だ。
もともと立派な材を使って頑丈に建てられていたわけではないようで、床もきしんでいた。
雨漏りもあったし、ついにはモルタル壁が剥がれて落ちるようになっていた。
建築物としては限界だった。
去年の9月の地震は危なかったのだろうと思う。
震度5弱だったから耐えてくれたが、もう少し震源が近かったら・・・・・
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地元の畜産振興にはたしてきた役割は大きいと思う。
この地域で働いている産業動物獣医師の半数以上は、この畜産研修センターに宿泊して学生実習を経験している。
JRAをはじめ全国で馬の獣医師になっている学生実習経験者も数多い。
毎年30名前後の獣医科学生が宿泊し、この地域を訪れていった。
そのことだけでも地域振興になっただろうと思う。
講義室もあったので、獣医師や農業者が対象の講習会も数多く行われた。
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今は新卒獣医師の確保も難しくなっているので、NOSAIや開業獣医師も実習生を積極的に受け入れている。
新卒を採用しても離職率もとても高いので、いきなり就職するのではなく、実習に来て実情を知った上で就職してもらいたいのだ。
実習生、研修生を受け入れるには宿泊場所があるかどうかが問題になる。
旅館に泊まっても、朝夕送り迎えをするのはたいへんだし、夜中の急患で出入りするのはヤメテクレと言われる。
夜中の急患を観ないんじゃあ、うちで実習・研修する意義は半減する;笑
実習生や研修生を持続的に受け入れていくなら宿泊施設はどうしても必要だ。
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獣医科大学へ入って5年目だった夏、馬の診療も観たいので実習に行きたいと一条教授に相談したら、
「ああ、じゃああそこへ行けばいいよ。電話しといたげるから。」
と頼んでくれた。
この研修センターがなければ、私はこの地域に就職しなかったかもしれない。
ぶっ壊されていくのを観ていると、感慨深いものがある。