「のどじゃなくて鼻が鳴ってる気がする」、と言われることがある。
私は、今まで2-3頭鼻翼ヒダ切除をしたことがある。
それらの馬を手術したときも、今も、必要だったのか、効果があったのか、半信半疑だ。
獣医外科分野の最も権威ある学術誌 Veterinary Surgery に鼻翼ヒダ切除についての報告が載った。
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Alar fold resection in 25 horses: Clinical findings and effect on racing performance and airway mechanics (1998-2013)
鼻翼ヒダ切除した馬25頭:臨床所見と競走成績と気道メカニクスへの効果(1998-2013)
ノルウェイ、オスロ、ノルウェイ生命科学大学からの報告。
要約
目的:鼻翼ヒダ虚脱が診断され、外科治療された馬で臨床所見とパフォーマンスを報告し、形状と呼吸器閉塞の程度を評価すること。
研究のデザイン:回顧的症例シリーズ。
動物:21頭のスタンダードブレッド、2頭のコールドブラッド・トロッター競走馬、1頭のサラブレッド、1頭のアイスランド馬。
方法:鼻翼ヒダ虚脱は高速トレッドミル上での運動の間に鼻道憩室が膨らみ、持続的に異常な震える呼気音がし、それが鼻翼ヒダの一時的な背側への縫合により楽になったことに基づいて診断された。
5頭では、鼻咽頭気道圧を測定した。
完全な、両側の鼻翼ヒダ切除後のパフォーマンスは競走成績記録の調査と馬主あるいは調教師への電話インタヴューにより評価した。
結果:馬は、プアパフォーマンスか、異常な呼吸音、あるいはその両方により受診された。
21頭スタンダードブレッドのうち12頭では、付随的な動的問題が見つかった(間欠的DDSP:n=10;鼻咽頭蓋の虚脱:n=2)。
報告されている正常値に比べて、鼻翼ヒダ虚脱がある馬の呼気時の鼻咽頭圧は上昇しているように思われた(範囲+10.8から+21.8cmH2O)。
鼻翼ヒダの完全外科的切除と同様に背側への固定は呼気時の鼻咽頭圧を報告されている正常レベルへ改善した。
平均68か月(範囲7-121)の追跡において、25頭中20頭は手術後競走しており、17頭の繋駕競走馬のうち13頭はキロメーター当たりの時間が変らないか、改善されていた。
結論:鼻翼ヒダ虚脱は軽度から中程度の呼気閉塞を引き起こす。また、この集団の二次的な鼻咽頭虚脱につながっているかもしれない。
臨床的重要性:完全外科的切除は鼻翼ヒダ虚脱の治療として効果的だと思われた。
鼻咽頭圧測定は、鼻翼ヒダ虚脱の診断を確定できる可能性がある方法である。
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これは本文中の写真。
しっかり鼻孔を切開して、鼻翼ヒダを完全に切除している。
この手術方法は新しいものではなく、Equine Surgeryにも以前から載っている。
内圧まで測ってしっかり診断した、というのが要点のようだ。
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この夏も鼻が鳴る、と言われて2頭ほど鼻翼を開帳するように縫合して観察?聴取?してもらった。
2頭とも”鼻鳴り”は変らなかった、とのことで、鼻翼ヒダ切除の適応ではないと診断した。
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図書館で借りてきて読んだ。
犬と、そして福祉のストーリーだった。

読む人は、続編もあわせて読むと良い。
少しは希望も見えてくる。
生きていくことは、生きていくだけでたいへんだ。