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子牛の脛骨螺旋状骨折 ピースあり のプレート除去

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5週間前に脛骨螺旋状骨折 ピースあり をdouble DCP 固定した黒毛和種雄子牛

経過は良好で、プレートを抜くことにして来院した。

Daily Gain (1日増体量)は良好。

近年はセリでもDGがよろしくないと値段が落ちるのだそうだ。

キャスト固定して寝起きが不自由だったりするとDGは落ちるだろう。

                 -

外貌上、肢の変形はない。跛行もない。いたって元気。

プレートが2枚入っていると、骨癒合の状態は詳細には評価しにくい。

1枚抜いて、X線撮影してみる。

これならもう1枚も抜いて大丈夫だろう。

通常、double plates で内固定したら、step remove と言って1枚ずつ、数週間あけてplateを抜く。

しかし、手間と費用が増すので、1回で済ませられるならそうしたい。

しばらくは、この親子だけでおとなしくしてもらう。

                  /////////////

リンゴの花が咲いた。

ことしは2本咲いたので、またリンゴがなるかもしれない。

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夏の臨床実習の申し込みが来始めているが、セリ(セール)中は生産牧場も育成牧場も忙しくて、予定の手術も往診も暇になりがちだ。

セリを見てみてみたい、のでなければ避けた方が良いだろう。

今年は、

セレクションセール 7/16

サマーセール 8/19~22

セプテンバーセール 9/17~18

オータムセール 10/15~16

となっている。

また、建て直しの計画があるので、秋以降は宿泊施設には泊まれなくなるかもしれない。

いちおう、お知らせです。

 

 

 

 


黒毛和種雄子牛の臍帯膿瘍

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9時に関節鏡手術。腕節骨折、それも左右両側。

10時半に腰痿のX線撮影。

併行して当歳馬の眼の検査。

その最中、黒毛和牛の子宮捻転の依頼。

午後も3頭、手術の予定が入っている・・・・・・「イイや、すぐ連れて来て」

                -

子宮頚管が開いていて、子牛の頭、前肢が触れたので捻って整復できた。

そのあと少し手間取ったが、経膣分娩させることができた。

子牛は胎便まみれ。

低酸素になると、子宮内で胎便をちびってしまう。

胎便の混ざった羊水を誤嚥すると肺にダメージがある。

拭いているのは、実習生のOさん。

                   -

午後の手術は、

当歳馬の肢軸異常、球節内反。

4歳競走馬の去勢。

そして、

50日齢の黒毛雄子牛の臍の膿瘍。

抗生物質を投与していると小さくなるが、止めるとまた大きくなってきた、とのこと。

気管挿管して、吸入麻酔下で臍帯を破らないように切除・摘出した。

雄牛はペニスが臍に近いのでちょっと難しい。

おまけに、尿膜管や臍動脈、臍静脈がつながっていないか、慎重に切除しなければならない。

膿瘍を破ったら、腹腔が汚染される。

破らず、取り出せた。

ぴよんとついているのは臍静脈。

腫れているがふつうの見た目になった。

膿瘍は切開して、内部の膿を細菌培養しておく。

抗生物質感受性を知ることで、術後の抗生物質選択の指標になる。

                    /////////////

今年は、昆虫にも好ましい天候が続いているようだ。

手術室でもハエ叩きをしなければならない。

シラカバの若葉を食べるコガネムシ。

根を食べる幼虫の被害はもっと大きいらしい。

こんなのまで。

 

 

 

1歳馬の骨盤骨折後の跛行

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冬に後肢の跛行をしていた1歳馬。

かなり良くなったが、跛行が続くのでX線撮影に来た。

右の臀部は少し筋萎縮している。

もっと萎縮していたのが、かなり戻ってきたのだろう。

全身麻酔して仰臥位で大型X線撮影した。

完璧な仰臥で撮影できていることは、恥骨結合と脊柱の棘突起が重なっていることでわかる。

閉鎖孔の大きさが、右が小さく写っている。骨盤の右半分が変形したのだ。

股関節周囲がひどく太くなっている。折れて骨増勢したのだ。

関節腔はかろうじて写っているが、左ほど鮮明に写らない。

股関節臼縁とか唇と呼ばれるあたりも形状がおかしい。

寛骨、つまり骨盤は、恥骨・腸骨・坐骨の3つの骨からできていて、それが股関節臼でつながっている。

構造的に、股関節臼に力が集中するようになっているし、

後肢を滑らせて横倒しに転倒すると、股関節付近に横から衝撃が集中する。

冬に氷の上で転倒し、骨盤骨折したのだろう。

骨癒合が終わって、まだ跛行が続いているので、競走馬になるのは難しいだろう。

                     -

こういう画像診断は、ポータブルX線撮影では無理だ。

超音波で体表や直腸検査して、股関節周囲の骨増勢を判断することはできるかもしれないが、やはり予後判断までは難しい。

さて、今使っている大型X線撮影装置も15年を過ぎ、部品供給がなくなる。

5千万くらいかければロボティックCTが買えるらしい;笑

                   /////////

こいつらの医学のために、どなたかご寄付を!!;笑

高齢馬の血栓栓塞性腸管壊死

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疝痛で運ばれてきた24歳。

サラブレッドではない。

長く乳母として働いてきたハフリンガー。

右前下肢は内反して固まっている。

血液検査ではPCVは30代。しかし、乳酸値が5を超えている。

超音波検査では、結腸壁の肥厚がある。

直腸検査では、腹圧は高くなく、明らかな異常はない。

発熱とわずかな下痢の経過がある。

横たわって苦悶する痛みがある。

もう7時間ほどの経過がある。

助けたいなら開腹手術した方が良い。しかし・・・・

余生をすごさせるだけの馬で、そもそも経済動物ではない。

家畜共済には加入していないので、開腹手術するだけでもかなりの費用がかかる。

そして、24歳の肢が悪い馬だ。

            ー

飼い主さんの希望で開腹手術することになった。

大結腸に壊死部があった。

助けるためには大結腸切除・吻合するしかない。

私は今まで何頭かやってきたし、多くが助かっている。

切除された大結腸。

粘膜面。

結腸動脈には血栓ができて完全に閉塞していた。

静脈には血餅ができて閉塞していた。

血管を開いて、血栓を取り出してほぐしてみたが、円虫の仔虫は確認できなかった。

動脈内壁にも、仔虫が這ったあとだと言われている糸状隆起線はなかった。

しかし、今までの経験で、イベルメクチンできちんと駆虫されている馬ではこのタイプの血栓による腸管壊死をみたことがない。

この馬は移動して1ヶ月ほどなので駆虫歴はわからないが、おそらくしばらく駆虫されていない。

(あとで虫卵検査して、線虫卵300超個/gだった)

            ー

開腹手術後、夜中まで平穏だったが、一口乾草を与えたあと呼吸が速くなり横臥した。が、すぐに落ち着いた。

朝、また痛くなった。フルニキシンを投与したが、すぐまた痛くなった。

蠕動はある。

何だ?

できることは何だ?

(つづく)

          ////////

ライラック・センセーション。

もっと大きくならないと見応えないね。

 

 

 

 

高齢馬の血栓栓塞性大結腸壊死 治療

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大結腸を切除する手術をした翌朝も疝痛を示し、フルニキシンを投与しても治まらなかった高齢の元乳母馬。

胃カテーテルを入れたが、逆流はなかった。

点滴にリドカインを加えた。

蠕動はあったし、胃カテーテルで逆流はないし、小腸が張っている所見もないので、術後イレウスだとは思えないが、リドカインが痛みを抑えてくれることを期待した。

                     -

なんとなく落ち着いて、2時間に1回青草を食べさせた。

午後、また痛くなった。

横臥してしまう。

起こして、直腸検査してみた。

直腸には正常な硬さの便が来ていた。

異常所見なし。

                     -

リドカインは終了し、ヘパリンを入れた持続点滴を翌朝まで続けた。

疝痛はなく、退院していった。

                    ---

手術後に疝痛を示したときから、Equine Acute Abdomen を調べた。

thrombo embolic colic 血栓栓塞性疝痛と、可能な治療について。

ほとんどが剖検で確認されるか、手術で見つかるが、予後は悪い。

アスピリン(血液を固まりにくくする)の投与が行われることはあるが、効果は不明。

ヘパリン療法については、癒着防止法のひとつとして詳しい記述がある。

低分子量のヘパリンが良いらしい。皮下注射する、とあるが・・・・

投与量は、40IU/kg/12hrsが標準のようだ。

今回の症例では、最初にヘパリンを40IU/kg iv し、点滴を始めた。

24時間はヘパリン投与したことになる。

ヘパリン療法が効果をあげたかどうかは、わからない。

                   ///////////

ぜんぜん別の話。

高齢者の悲惨な交通事故が続いている。

高齢者がもっと増えることは間違いないので、このままだとこういう事故はもっと増えるだろう。

巻き添えになった方には悲劇としか言いようがない。

アクセルとブレーキを踏み間違えて、しかしブレーキが効かなくなったと思い込んで踏み込み続けたのが原因のようだ。

それなら、

アクセルを床までベタ踏みしたらかえって燃料供給が止まるようにしておけば良いのだと思う。

普通に運転していてフル加速する必要などないからなんの問題もないはずだ。

日本では180km/hr出せるような車も、180km/hrを越えたときにスピードリミッターが働いて、燃料供給が止まって少し減速するようになっている。

体験したことがあるが(どうして体験したかは訊かないでください;笑)、危ないものではない。

フルスロットルの最後に、高齢者でも踏みぬけるわずかな引っ掛かりを作っておいてもいいだろう。

ブレーキと間違えて思いっきり踏んだら、かえって減速するように車を作っておくことは今の技術なら簡単にできるはず。

自動運転を開発する前に、もっとやることがあると思う。

                     ---

プンゲンストウヒ・ホプシー。

今年も若葉がいっぱい出たが、芯芽は出ない。

気長に待つか・・・横枝を芯にすべきか・・・・

この樹が見ごたえのある大木になるのを私は見れないだろう。

誕生日でした;笑

 

 

 

両側の側頭骨舌骨関節症の角舌骨摘出を緊急で

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午前中、予定を変更してもらって、前の日に第一指骨を縦骨折した2歳馬のscrew固定手術。

私は途中からは、慢性の体重減少の繁殖雌馬の診察と検査。

午後は、今週私は検査業務。

手術室では1ヶ月前に顔面骨折を固定したプレートの除去。

3時から6歳の引退競走馬の去勢。

4時から、去年、左側の側頭骨舌骨関節症で角舌骨摘出手術をした繁殖雌馬の検査。

去年から、右側も側頭骨舌骨関節症が起きていることはわかっていた。

しかし、症状が左側だけだったので左だけを手術した。

そして、この馬はまったく食べられなくなっている。

左も完全には回復していないせいかもしれない。

左耳も位置が高くなく、動くが鈍い。

左瞼も少し落ち気味。ただし閉じることはできる。

右耳は動かない。右瞼も動かない。

右の鼻から上唇は弛緩している。

下唇は両側が弛緩している。

舌は動く。

皮膚テントは延長している。脱水があるのだ。

このままだとどんどん衰弱するので、緊急で右側の角舌骨摘出手術をすることにした。

出血が多くててこずったが、ボスミンガーゼによる圧迫止血と結紮止血で対応した。

あとは回復するまで維持療法がどれだけできるかだ。

                 ////////////////

ルピナスは外来種として問題になっているらしい。

繁殖力が強すぎるんだな。

庭から逃がさないようにするにはどうすればいい?

 

 

 

 

 

Rhodococcus equi のコロニー性状と感受性

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好天続きの年には肺炎が多く、

雨が続く年は下痢が多い、と

かつて年寄り獣医さんは言ったもんだ;笑

今年はロド肺炎の当たり年かもしれない。

検査室にも連日気管洗浄液が持ち込まれている。

この検体もRhodococcus equiが純粋に生えている。

しかし、コロニーは、全体に広がった小さいコロニーと、それとは違う少数の大型のコロニーがある。

抗生物質感受性ディスクを乗せた培地。

ペニシリン、アンピシリン、セフチオフル、セファゾリン、カナマイシンの周りには大きなコロニーは生えていない。

が、うっすらと濁って見えるのは、コレラのディスクの周りにも発育しているから。

こちらのゲンタシンの周りはうっすらとも生えていない明瞭な阻止円ができている。

テラマイの周りは発育している菌があるようだ。

ミノサイクリンの周りも明瞭な大きな阻止円がある。

Rhodococcus equiの抗生物質耐性が進みつつあることがわかる。

コロニー性状と感受性が関係があるように見えたのは、検査する側としては興味深い。

長期間の治療になりがちな病気なのだが、耐性が進まないような抗生剤治療も意識する必要がある。

                   ---

ロド肺炎で死亡した子馬。

2ヶ月齢あまり。

肺にはいくつも膿瘍があった。

膿瘍以外の部分も含気できなくなっている。

化膿性気管支肺炎だ。

破れて肺気腫になっている部分もある。

1日でも早くみつけて早く治療を開始する必要がある。

膿瘍ができたらそう簡単には治らない。

多くの子馬が1ヶ月から1ヶ月半の日齢で発症する。

その日齢の子馬を重点的によく観察することだ。

                ////////////////////

右往左往しないで、

やるべきことをやりましょう。

 

 

 

   

黒毛和種子牛の脛骨”再”骨折

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2ヶ月齢で脛骨を螺旋・ピースあり骨折した黒毛和種子牛。

ナローDCP2枚で内固定し、40日後に2枚ともプレート除去した。

それから、11日目。

脛骨がまた折れてしまった。

骨癒合していなかったのか?

骨癒合してなかったら、10日間ももたないだろう。

骨折しても30日間で骨癒合が期待できる子牛だ。プレートをはずした後も骨はかなり丈夫になりつつあったはず。

親牛に乗っかられたかもしれない、と飼い主さんの弁。

               -

弱い部分で折れたのだろう。

角状変位しがち。

minimally invasive technique でできないかやってみようとしたが、厳しかった。

新鮮な骨折とちがって、整復がうまくいかない。

脛骨の内側を切開したが、皮下は結合織で厚くなっていて、骨の表面も滑らかではない。

本当は脛骨稜上を切開し、脛骨をむき出しにするようにして骨を大きな骨鉗子でつかんで整復したい。

が、外科侵襲を大きくすると感染がこわい。

脛骨稜上は最初の手術で切開した痕が残っている。微小な感染巣がある可能性もある。

                 -

新鮮な骨折ならlag screw で仮止めしたいことろだが、整復も仮固定もうまく行きそうにない。

もう体重も100kgを超えているので、ブロードDCPを当てて、主に4.5mm cortical screw で固定した。

screwを締めても、別のscrewを締めるとまた回る。

骨膜が厚くなっていて、DCPを完全に押し付けることが難しいのだ。

本当はLCPとLHSで内固定すれば骨にLCPを押し付けていなくても固定強度を造れる。

しかし、LCP/LHSを使うとインプラントの値段が3倍以上になってしまう。

                  -

今度は親と離して飼ってもらう。

完全な骨癒合が得られるまでプレートを入れておく。

本当は抜く必要はないのかもしれないのだが・・・・

               //////////////////////

エゾスカシユリ エゾカンゾウ、はニッコウキスゲと同じなのだそうだ。

北海道の人はその辺に生えているので珍重しないが、

ニッコウキスゲが庭に自生しているなんて素敵だと思う。

笹を刈り払うのに邪魔だけど・・・・・笑

 

 


高齢馬の変形性骨関節症DJD 肢軸が曲がる

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他の地域から25歳のクウォーターホースが跛行し、

近位指節関節が変形性関節症になっている。と相談された。

X線所見では、骨増勢がひどく、いままでやってきたように関節を大きく開いて、軟骨を除去し、LCPとscrewで関節固定するのは厳しそうだった。

それで、Richardson教授に相談したら、

関節を開く必要はない。

5.5mmscrewを数本、lag screw として入れれば良い。

しばらくキャスト固定しておく。

という回答だった。

結局、その25歳の馬は、鎮痛剤に反応し、すぐには手術しないことになった。

ただ、近位指節/趾節関節のDJDは、痛みがコントロールできていればそれで良いかと言うと・・・・・・

                 -

このハフリンガーは24歳。

もう球節も曲がらない。

固まったまま、下肢は内反している。

蹄は外側ばかりが磨り減るのだろう。

内側が伸びてしまっているのを切ってもらったら少し楽になったそうだ。

蹄関節もDJDを起こしている。

舠嚢骨も傷んでいる。

鎮痛剤を日常的にあたえなければならないそうだ。

変形性関節症は関節の癒合が完成されればひとつの”治癒”ではあるのだが、

放置していると自然に骨癒合する前に、肢軸が崩れてしまう。

軟骨下骨の崩壊がどんどん進むためだ。

相談された25歳の馬も、こうならなければよいのだが・・・・・・

                   /////////////////

おらももう7さいです

わかいときほどやんちゃじゃなくなったとしんぱいされています

やんちゃなほうがいいんでしょうか?

 

186kgの上腕骨骨折 double LCP

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日曜日は小学校の運動会だった。

休みだったM先生から電話が来たので、アキレス腱でも切ったんじゃないだろうな?と思ったら、

上腕骨骨折、という。

いや、人じゃなくて馬が。

              -

折れ方としては悪くない。

骨幹中央部。

粉砕していないし、ピースもなさそうだ。

雌馬で繁殖供用でも良いとのこと。

それならやってみる価値はある。

ただし、試してみるなどというものではなく、苦闘の数時間になるのは経験済み。

成書に載っている見事なORIF open reduction and internal fixation の成功例の写真だけが励まし。

AO Vet のHPにも未だに上腕骨だけは手引きの記述がない。

世界的にも誰も手引きをかけるほど経験がないのだろう。

             -

上腕骨骨幹部骨折では、アプローチはcranial approach が良い。

「家畜診療」には外側からアプローチする方法を書いてしまったが、外側からアプローチすると橈骨神経の処理が難しい。

そして頭側にプレートを乗せにくい。

とくに遠位部は内側顆に乗せたいので、頭側アプローチが好ましい

口でいうほど、そして人がやったX線画像を観て思うほど容易ではない。

ほとんど完全に整復し、骨鉗子で仮固定できているように見えるが、骨折部を触るとピッタリあっていない隙間を触ることができる。

かなり肢をひっぱり上げているのだが、外反するようにずれているのかもしれない。

それと捻れもあるのかもしれない。

完璧な整復を求めても、いたずらに時間を消耗し、腕や指も萎えていく。

なんとか仮止めのlag screwをうった。

このscrewはとにかく手早くしっかり締めたいので長いものを使った。

もう1本仮止めのlag screwをうって、こちらは短いものに差し替えて、その上にプレートを乗せる・・・つもりだった。

しかし、うっかりこのscrewを差し替えずにプレートを乗せてしまった。

結局、プレートを回転させ、長すぎたlag screwを差し替え、余計な手間がかかった。

そのおかげで、骨折部に正しい位置と角度でプレートスクリューを入れることができた。

外側に2枚目のLCPを当てたい。

100kgまでならブロードプレート1枚で行けるが、この子馬はもう186kg。

頭側からアプローチしているので、これもキツイ。

上腕骨はとても難しい形状をしている。

太く、短く、捻れていて、遠位部の尾側には大きな尺骨頭窩がある。

当てるプレートも大きく反らさなければいけないが、大きく曲げると、それに固定したLCPドリルガイドが他のscrew holeへのアプローチを邪魔する。

push-pull deviceで仮止めして・・

位置と角度が悪くないのを確認したら・・・・

あとはできるだけLHSを入れたいが、頭側のplate screws と当たるかもしれない。

LHSドリルガイドに3.2mmドリルガイドを差し込んで、3.2mmドリルビットで穴を開けて、当たらなければ4.3mmドリルで穴を開けなおして、LHSを入れる。

外側のLCPは6穴を使ったが、7あるいは8穴でも良かったかもしれない。

肩から肘の先まで切り分けている。

傷を閉じるのもたいへんだ。

手術時間は3時間あまり。

3つの器械台に満載の器具とscrewなども洗浄しなければならない。

翌日午前もプレートを入れるかもしれない骨折手術が予定されていた。

ざっと片づけが終わって夜9時。

                   -

麻酔からの覚醒起立が問題なのはわかっていた。

今回は、Madigan loop rope を使ってみた。

しかし、あまり効果はなく、この子馬が3本肢で起立できたのは夜中3時だったそうだ。

                    /////////////////

 

 

翌朝、 久しぶりの雨。

草木も生き返るようだった。

職場へ戻ったら、なんと結腸捻転の手術中。

時間を遅らせて、2歳馬の中足骨内顆からの骨折のscrew固定手術。

午後は、脛骨近位成長板骨折が治癒した当歳馬のプレート抜去手術。

おまけに1歳馬の中足骨部の外傷縫合。

いやいやお疲れ様でした。

 

 

 

 

 

 

186kgの上腕骨骨折のアプローチ

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上腕骨骨折の内固定手術が難しいのは、ひとつには筋肉が厚いせいだ。

子牛とちがって、馬は、子馬でも筋肉が厚い。

肩先から肘関節の上まで、上腕二頭筋の外側に沿って切開する。

その部分を広く覆っている上腕頭筋は、筋繊維に沿って切り広げて良い。

その奥の上腕二頭筋と上腕筋の筋腹を分ける。

斜めに3つならんでいるのが、内側近位から上腕二頭筋、上腕筋、橈側手根伸筋、だ。

上腕骨骨幹部骨折の手術で大事なことは、橈骨神経を確認し、プレートで押さえつけたり、ドリルで巻き込んだりしないことだ。

橈骨神経は上腕筋の遠位に沿うように走っている。

もし、切れていたら・・・・あきらめろ。

これは上腕筋の内側から骨折部にアプローチし、骨鉗子をかけて整復を試みているところ。

上腕骨は指先で触れるが、観ながら整復するのは無理。

override 騎乗変位を整復するために肢はかなり吊り上げている。

そうすると筋肉にテンションがかかって、筋間は広がらなくなる。

手術は2人で始めたが、3人必要だった。

それも3人とも解剖や骨折内固定やの勘所をわかっているのが望ましい。

LCP用のドリルガイドはLCPに固定されるので、プレートを扱うハンドルとして使える。

LHS以外は5.5mm screwを使いたい。

しかし、5.5mm screwはLCPには斜めには入らない。

頭側アプローチをしているので、外側プレートを当てるのは難しい。

そして、遠位部はLCPを橈骨神経の下にくぐらせなければならない。

はい、完成・・・・なんてものではない。

頭も指も腕もへとへと。

これからこの長大な深い傷を閉じなければならない。

そして、血まみれの大量の器材も洗浄しなければならない。

今晩のうちに滅菌しなければならない。

明日は朝からまたLCPを使うかもしれない骨折手術を予定しているのだ。

                                 ////////////////

月曜の夜は、空腸に大網がからんで絞扼した繁殖雌馬の腸管手術。

火曜の朝は、おだやかな快晴だった。

 

 

馬の高カリウム血症の治療についての総括 introduction

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膀胱破裂や、結腸捻転で、高カリウム血症に遭遇するときがある。

非常に危険な状態なので、対応方法について知っておく必要がある。

2016年のAAEPで、高カリウム血症の治療について総括している講演があった。

以下は、その抄録。

講演者は、Langdon Fielding獣医師。

カリフォルニアの馬獣医師のようだ。

               -

Introduction

高カリウム血症は生命の危険があるカリウムの混乱で、成馬にも子馬にも起こりうる。

もし異常が重度であれば野外で即時的治療を始めるべきだ。

他の動物での研究では馬の高カリウム血症で推奨されていたいくつかの治療は、以前に信じられていたほど効果的ではないかもしれない。

馬の臨床家は、高カリウム血症の治療に、往診先でも病院内でも使うことができるこれらの新しい治療のアルゴリズム(問題解決のための段階的手法;hig注)について知るべきだ。

 馬の高カリウム血症には、2つの主な生理学的原因がある。

1)体からカリウムを排泄する利尿システムの破綻、そして

2)細胞内から細胞外液へのカリウムの移動、である。

成馬では高カリウム血症は、無尿性腎不全、高カリウム周期性麻痺(HYPP)、泌尿器系の破裂(膀胱、尿管、尿道)、大量の細胞破壊(横紋筋融解症あるいは溶血)で起こりうる。

子馬では、無尿性腎不全と泌尿器系の破裂がもっともよくある原因である。

しかし、細胞融解にも遭遇することがある。

高カリウム血症は基礎にある状態の経歴、臨床症状の発現、あるいは検査室での確証にもとづいて疑われるかもしれない。

カリウムの測定は保存や周囲の気温によって影響を受けることがあり、それゆえに予想外の結果は確認しなければならない。

 高カリウム血症の臨床症状は、軽いが、典型的な筋力低下を示しているかもしれない。

心電図の変化は血漿カリウム濃度が6.2mmol/l以上になっていると現れるかもしれない。

それは、1)高い、あるいは尖ったT波、2)平坦なP波、3)QRSの延長、4)心停止が起こりうる。

心電図の変化は高カリウム血症でいつも起こるとは限らず、それがないからと言って診断除外に使うべきではない。

 もし、高カリウム血症が履歴(HYPP状態、腎不全の経歴)、臨床症状、あるいは検査結果から疑われたら、すぐに治療を始めるべきだ。

中には(例えばHYPP)往診先で解決できる症例もあり、一方それ以外の症例では集中治療ができるところへ輸送する前の安定のために行うことになる。

高カリウム血症ではわずかに改善しておくことさえ命を救うことにつながる。

この文章の目的は、高カリウム血症への治療のアプローチについて述べ、馬の臨床にかかわる最近の変化に焦点を合わせることである。

to be continued

                                   ---

ひどい高カリウム血症は、不整脈や心停止につながるので、すぐに処置しなければならない状態だ。

また、筋力の低下も引き起こすので、麻酔覚醒起立時の事故の要因にもなりうる。

補正方法を知っておかなければならないが、かつて信じられていた方法で否定されつつあるものもある。

AAEPでの講演の抄録を全訳しておきたい。

             //////

きのうは北海道獣医師会代議委員会。

耐震基準を満たしていない建替えが必要な獣医師会館にオッサンを通り越してジイサンになりかけているセンセイたちが詰め込まれてイインカイ;笑

不快指数、高い。

かつて会員ひとりひとりからも寄付を集めて、現在の北海道獣医師会館を建設した先人たちには驚嘆する。

右肩上がりの時代だったからできたのだろうな。

              ー

早朝。

カシワの葉がひろがって、雑木林は暗くなった。

今日は残っている薪を割ってしまおうか。

 

馬の高カリウム血症の治療についての総括 materials and methods

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高カリウム血症をどう治療するか?

AAEPでの講演抄録から。

              -

Materials and Methods

高カリウム血症の緊急治療は下記のように概略される。

以前の標準的な治療についての推奨に対する新しく提案された変化には印(*)をつけた。

重度の高カリウム血症

7.0mmol/l以上、そして、あるいは臨床症状とECG変化を伴う。

グルコン酸カルシウム(23%)の静脈内投与

0.5-1ml/kgで投与する。

電解質液の5リットルバッグに希釈し、30-60分以上かけて投与することができる。

カルシウム投与が速過ぎると不整脈が起こることがある。しかし、命の危険がある状態ではもっと速い投与速度が必要となりうる。

カルシウム投与は明瞭には血漿カリウム濃度を変化させないが、高カリウム血症の心臓への影響を和らげるために使われる。

 下記の、中程度の高カリウム血症の治療は、重度の高カリウム血症の症例でも始める。

中程度の高カリウム血症

5.5mmol/l以上、そして、あるいは、臨床症状とECG変化を伴う。

等張液による利尿*

以前に推奨されていたのはまったくカリウムを含まない等張(0.9%)食塩液であった。

しかし、0.9%食塩液の酸性化作用はカリウムの細胞内から細胞外への移動を引き起こし得ることを研究結果が示唆している。

このカリウムの移動は適度(5meq/l)にカリウムを含んだ酸性化させにくい輸液a より有害かもしれない。

a:Normosol-R, Hospira, Inc.,Lake Forest,IL 60045

1時間に4-6ml/kgの市販の酢酸液の投与は輸液による利尿を引き起こすことができ、腎臓からのカリウムの排泄を増やす。

静脈内ブドウ糖投与

緊急状態では、静脈内ブドウ糖を、1分間に8-16mg/kg程度の速さで投与することができる。

実践的には、5リットルの輸液バッグに500mlボトルの50%ブドウ糖を加えて、平均的な500kgの馬に1時間ほどで投与する。

より緩徐なブドウ糖投与速度(1-2mg/kg/min)が、程度の軽い高カリウム血症では適切で、ひどい高血糖を引き起こす有害作用が少ない。

ブドウ糖投与は、自身のインスリン分泌を引き起こし、カリウムを細胞外から細胞内への移動させることで高カリウム血症を改善する。

静脈内インスリン投与

速い速度でブドウ糖を投与するのと組み合わせて使うなら、レギュラー・インスリン(100u/ml)を1時間に0.1-0.2IU/kg投与することができる。

さきに書いた実践的な方法と組み合わせるなら、500mlの50%ブドウ糖を入れた5リットルの等張電解質液にレギュラーインスリン0.5mlを加えることができる。

この輸液は、平均的な500kgの馬ならだいたい1時間以上かけて投与する。

さきに述べたように、インスリンはカリウムを細胞外液スペースから、細胞内液スペースへ動かすことを助ける。

著者は、血糖値をモニターできない状況でのインスリンの使用は推奨しない。

ひどい低血糖の結果は、高カリウム血症より明瞭で生命の危険となりうる。

ベータ作用薬*

ベータ作用薬の(吸入あるいは静脈内)投与は他の動物種でカリウム濃度を下げるとされてきた。

馬での研究が必要だが、同様の反応が観察されると思われる。

アルブテロール(180-900μg)の吸入が、呼吸窮迫で馬に投与することができ、高カリウム血症でも同じ開始ポイントになるであろう。

この薬物治療は迅速に投与でき、他の治療の開始前に遅れがあるなら命を救うことになるかもしれない。

インスリンと同様、ベータ作用薬はカリウムを細胞外から細胞内液スペースへ動かすことにより高カリウム血症を改善する。

フロセミド

静脈内輸液投与が始まったら、フロセミド投与(1mg/kg)が腎臓からのカリウム排泄を改善する助けになるかもしれない。

しかし、フロセミドは脱水がある馬には、適切な循環量の回復が達成されるまでは投与するべきではない。

加えて、フロセミドは、腎不全がある症例では慎重に使うべきである。腎機能のさらなる悪化につながるかもしれないからである。

フロセミドのCRI(continuous rate infusion)は、病院の環境で使うなら考慮されるかもしれない。

重炭酸ナトリウム*

高カリウム血症を治療するために、以前は重炭酸ナトリウムの早期の使用が唱えられていた。

臨床的な試験では、重炭酸ナトリウムの効果はないか、あるいは今まで挙げた治療より明らかに劣っている。

現時点では、重炭酸ナトリウムは高カリウム血症の第一線の治療法として、もはや用いるべきではない。

しかし、他の治療が満足いかない無反応の症例では考慮しうる。

to be continued.

                                 ---

高カリウムだから生理食塩液!と思い込んでいたが、それは望ましくないという指摘。

ブドウ糖をもっと積極的に使うべきかも知れない。

ボログルコン酸カルシウムは、牛も診る私たちにはなじみがある。

フロセミドはかつては置いていたが、ほとんど使うことがないので・・・・・

アルブテロールも、緊急薬として使えるようにしておくべきなのだろうか・・・・・

インスリンは、ねえ・・・

重曹は、伝統的に、心情的に、使いすぎ。思っているような効果はないのかも。

                    -

土曜日、

後頭骨骨折の骨片摘出。てこずると思っていたんだ。

当歳馬の後肢の跛行。骨盤まで撮影したが、明瞭な異常は不明。しかし、SAA600超。

子馬の跛行では細菌感染を疑え。まず、血液検査を!鉄則だ。

昼から繁殖雌馬の結腸捻転。

360°以上捻れていたし、浮腫もかなり。軽症ではなかった。

                   //////////////

大雨でした。

雷が怖くて、軒下にいたら、とうちゃんが玄関フードへ入れてくれました。

退屈だけど、雨宿りの場所としては一番気に入ってます。

おやつもここが一番もらえるみたいだし。

 

 

 

 

 

馬の高カリウム血症の治療の総括 Results

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さて、馬の高カリウム血症の治療について、AAEPでの講演を紹介してきた翻訳文も最後。

                 -

Results

高カリウム血症の治療はしばしば一時的で、元の内科的状態が解消するまでの橋渡しである。

HYPP hyperkalemic periodic paralysis の症例は急速に改善され、長期間の管理はその後の問題を予防しうる可能性がある。

膀胱破裂は外科的に修復することができ予後は良好である。

しかし、それ以上に長期的予後が良くない状態(急性腎不全)は、初期には改善を見せても、後に悪化するだけかもしれない。

一般的法則として、高カリウム血症は、尿が作られていない患畜より、機能的な腎障害がある馬での管理の方が容易である。

Discussion

馬臨床家は述べてきた治療方法を高カリウム血症の初期治療として用いることができる。

輸液と下記のリストは容易に行うことができ、救命となりうる。

馬の高カリウム血症の臨床的治療

1. バランスのとれた等張の電解質液の5リットルバッグ

2. 加えて、50%ブドウ糖500ml

3. 加えて、レギュラーインスリン0.5ml(100units/ml)

4. 加えて、23%カルシウムグルコネート500ml

この輸液合剤は、1時間あまりで10ml/kgの量を投与できる。

もし静脈内輸液治療が遅れるなら、アルブテロールの吸入投与を行うことができる。

長期のケアとして、ブドウ糖とインスリンが入った静脈内輸液はフロセミド投与と同様、使うべきものかもしれない。

                  -

この文章は、高カリウムが危険だから、救命目的で対処することが主眼となっている。

細胞内からカリウムが抜けた状態であるなら(腎不全や膀胱破裂での高カリは別にして)、カリウムを細胞外液から細胞内へ戻してやることは、一般状態の改善にも役立つのではないだろうか。

ブドウ糖の積極的利用はやってみようと思う。

それによりインスリンの分泌を促すこともできる。

どこかのタイミングで、血糖値のモニターもしておくと良いだろう。

                 ///////////////

盛夏が近づいてきた。

繁殖シーズンも終わり。

牧草作業も始まるようだ。

今週は東京で1時間講演、来月は3時間の講習と3時間の講義を頼まれている。そして・・・・9月までに教科書の文章を書かなければいけないんだった。

8月には学会と症例検討会もある。

負けずに夏を楽しもう!!

1ヶ月齢の橈骨螺旋骨折

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午前中、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

つづいて、6歳競走馬のEE Epiglottic Entrapment 喉頭蓋捕捉の切開手術。

昼休みしていたら、子馬の頭骨骨折の連絡。

午後に予定していた関節鏡手術とDDSPの治療を延期してもらって、内固定手術することにした。

            ー

私は仰臥で手術するのを好む。

写真はどういうわけか回転できないのだが、折れた肢はホイストで吊っている。

体重を利用して整復しようとしているわけだ。

橈側手根伸筋の内側に沿って橈骨に至り、橈骨に大きな骨鉗子をかけた。

整復を試みるが、だめ。

螺旋骨折なのだが、長斜骨折のようでもある。

今日は、「へ」の字作戦はダメだった。

思いっきり引っ張っておいてもらって、大きな骨鉗子で挟むことでずれがなくなって、なんとかlag screw で仮止めできるようになった。

仮止めできたら一安心。

テンプレートでLCPの形状を決める。

が、私はだいたい橈骨をはじめ、いろいろな骨の形状を経験で知っている。

微調整は、実際にプレートを骨に当ててみるしかない。

LHS用のドリルガイドをハンドルにしてLCPを橈骨に押し当てておいて、push-pull device をねじ込んでLCPを橈骨へ押しつける。

まず骨折部近くに皮質骨screwを入れる。

近位側と遠位側へLHSを入れる。

骨折線にかかっている一つの孔はscrewを入れないことにした。

内側にはナローLCP11穴を当てた。

やれやれ、それでも手術は2時間ほどだった。

明日は東京へ講演に行かなければならない。

この骨折手術の最中に、2歳馬の疝痛の依頼が来ていた。

骨折手術が終わるのにあわせて連れてきてもらい、すぐ開腹手術になった。


東京タワーの元で

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朝の便で、羽田へ。

京急で東銀座へ。そこで地下鉄日比谷線に乗り換えて、神谷町へ。

ロシア大使館を警備しているおまわりさんの物々しさに驚きながら、麻布台ビルへ。

全国公営競馬獣医師協会の事務所へははじめて来た。

午後、総会。

そのあとで、1時間、競走馬の骨折の応急処置と治療について語らせていただいた。

              ー

研修事業に20年協力してきたことに感謝状と立派な記念品をいただいた。

懇親会の三次会から抜けて、外へ出たら、東京タワーが輝いていた。

                  -

また早朝の便で北海道に戻り、昼過ぎに職場へ出たら、午前中に開腹手術があったとのこと。

午後にも当歳馬の疝痛がやって来た。

 

 

1ヶ月齢の橈骨螺旋骨折

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出張前日にやった橈骨骨折LCP固定について記録しておきたい。

この子馬は、X線撮影されていたが、添え木は当てられていなかった。

橈骨完全骨折は、前腕の内側へ開放骨折になりやすい。

綿包帯で肢を巻いて、蹄から背まで以上の長さの添え木を当てて、添え木と肢をガムテープやダクトテープで固定しておいてもらいたい。

開放骨折になっていたら・・・・・・・救命率は大きく下がってしまう。

橈骨神経が切れたら・・・・・・・予後不良だ。

これは手術台に乗せて肢を吊り上げたところ。

吊り上げる前はひどく変位していた。橈骨神経が心配だ。

幸い、小さな皮膚穿孔もなかった。

整復は難しかった。

結局、肢を思いっきり引張り挙げた状態で、内外にずれている骨折部を大きな骨鉗子で挟みつけたら、ほぼ整復できた。

4.5mmscrewをlag fashion で入れて仮止めした。

ブロードLCPを当ててみる。

頭側にブロードLCPを固定した。

骨折部の1孔だけはempty holeにした。

内側にナローLCPを当ててみる。

ナローLCPを固定した。

悪くないと思う。

最初のX線画像で、螺旋骨折部から近位へ亀裂が伸びている。

それには術後に気がついた。

内側のLCPの近位側のscrewは1本はLHSではなくて皮質骨screwを使うべきだったかもしれない。

                   -

子馬は、麻酔がかかったまま敷藁を敷いた馬房へ入れて母馬と一緒にした。

その方が安心して、すっかり麻酔が覚めるまで寝ているだろうと考えた。

起立は問題なく、その夕方のうちに起き上がった。

                 ////////////////

夏至を過ぎて、

だんだん日が短くなる。

これから暑さへ向かうとはいえ、寂しい気がする、ナ!?

 

 

馬の科学 廃刊

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「馬の科学」が廃刊になるのだそうだ。

驚いたし、とても残念だ。

私が馬の獣医師になった頃、年に12巻発行されていた。

馬の獣医学や臨床や研究や海外情報の記事がいっぱいで、毎号隅々まで読んでいた。

前身の「獣医技術」も書庫に蔵書されていた。

専用のファイルもあったので、私は全巻そろえていた。

JRA競走馬総合研究所の普及誌ということになっているが、臨床家にとってもとても興味深い内容で、若い馬の獣医師にはたいへん勉強になった。

JRAのトレセンでどのような診療や研究が行われているかを知ることもできた。

                      -

日本ウマ科学会が発足したとき、「臨床家には関係ない会だな」と思って入会しないつもりだった。

(そう思う充分な理由があったと思う)

しかし、「今後はウマ科学会の会員に配布するが、それ以外には配布しません」とお触れがあったので、

馬の科学を欲しいためにウマ科学会に入会した。

                      -

そのうち季刊になった。

そして、今回、廃刊されるとのこと。

現在は情報が取り易くなったので、情報誌としての使命を終えた、とのこと。

それには疑問も残るが、経費削減や手間のこともあるのだろう。

かえすがえす残念だが、致し方ない。

「馬の科学」を楽しみに読んで刺激を受けた時代を思い出すし、

たいへん勉強させてもらったことに感謝したい。

 

 

フレグモーネの末路

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まだ若い繁殖雌馬。

フレグモーネになって、治療をしていたのだが自潰し、

包帯を巻いていたのだが、肉芽が増勢し、切除に来た。

もう外へ大きくなった肉芽だけでなく、他の太くなった皮下織にも結合織が増勢し、その中に微少な膿瘍ができている。

こうなっては完治はしない。

体の抵抗力が落ちたときに再発を繰り返す。

塊状の肉芽を切除し、焼きごてで止血した。

このように肉芽増勢した理由がsarcoid化なのかどうか、パピローマウィルス検査に出した。

             ー

今年、初種付けして受胎している繁殖雌馬。

壁を蹴る馬で、後肢を腫らすことがあったのだそうだ。

それで、フレグモーネだとなって獣医師に診せるのが遅くなった。

抗生物質療法を10日間以上続けているが、自潰し、肢の形や蹄の動きもおかしい、とのことで来院した。

馬は、後肢は、球節を屈曲させると飛節と膝も屈曲する。そのとき、蹄関節も屈曲する。

こういう後肢の曲がり方、球節が屈曲しているのに蹄関節が伸展しているのは、屈腱の機能がおかしくなっているのだ。

腱鞘にも感染が起こり、屈腱が伸びるか切れるかしてしまったのだろう。

もうまともに歩けるようにはならないし、痛みも完治しない。

いずれ対側肢が蹄葉炎になったら立てなくなる。

あきらめることになった。

深屈腱は切れてはいないようだった。

屈腱腱鞘炎は起こしている。

種子骨靱帯も伸びてしまっているのだろう。

趾のメインの血管の中に大きな血栓ができていた。もう血行が途絶えていたはずだ。

              -

フレグモーネはこじらせると完治しなくなる。

よくある病態なのだが、致命傷になりうる病気だと思って治療・管理する必要がある。

                       //////////////

きのうは、午前中、競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。去勢もいっしょに。

午後は、競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

競馬場にいるときから相談されていたので、私が執刀した。

夕方、繁殖雌馬の疝痛。

ひどく痛くて立っていられない。

夜間放牧のために昼過ぎに放したのだが、夕方たまたま疝痛しているのを発見できた、とのこと。

結腸捻転だった。

発見と決断が早かったので大丈夫だったが、危なかった。

手術が終わったのが7時過ぎ。

カルテを書きながら、つまむ夜食はサクランボ。

贅沢だな~

この繁殖雌馬、麻酔は覚めているのになかなか立ち上がろうとせず、

起きて入院厩舎へ移せたのは9時近かった。

激痛でのた打ち回ってへばっていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

1歳馬の髄膜炎

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1歳馬が放牧地で様子がおかしく、歩くのがやっとで、馬房へ入れたら立てなくなった。

何度か立ち上がったらしいが、その都度倒れ、横臥のまま頭をばたつかせていて、あきらめた。

とのことで剖検を依頼された。

後頭骨と第一頚椎の間でスパイナル針で脊髄腔を穿刺したが、脳脊髄液は採取できなかった。

間違いなく脊髄腔に刺さっているのだが・・・・

外傷性に脊髄腔が破れて、脳脊髄液が失われてしまっているのか?

                -

今度は腹側から切って、脊髄腔を開く前に穿刺した。

濁った脳脊髄液が回収された。

しかし、どうして背側からの穿刺では採取できなかったのだろう・・・・

                -

そのまま脊髄腔を開けたら、

脊髄腔はフィブリンでいっぱいだった。

おそらくそのせいで脊髄液が採れなかったのだ。

頭も骨を切って脳室を開けてみたが、脳炎は肉眼ではわからなかった。

急性の感染性脊髄炎だったのだろう。

脳脊髄液は、研究機関へ培養とPCR検査に送った。

広い意味では敗血症だ。

特定の細菌は髄膜炎を起こしやすいことが知られている。

写真を撮るために途中で手袋はずして解剖しちゃったよ・・・・・

                ---

夜間放牧が続いて、馬達も疲れています。

元気な馬は大丈夫ですが、弱っている個体が居ないかよく観察して、必要なら休養させてやってください。

                 -

実は馬の獣医さんたちも、7月は怪我や事故の多発月なのです。

忙しかった春の疲れが溜まって、緊張が解けたこの季節に怪我や事故に遭いやすいのです。

休養させてやってください;笑

                                           ////////////////

ウッドデッキの塗装した。

しゃがんだり、座り込んだりしての作業が長く、疲れた。

暑くもあった。

私たちは春は家のこともなかなかできないからね。

 

 

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