高カリウム血症をどう治療するか?
AAEPでの講演抄録から。
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Materials and Methods
高カリウム血症の緊急治療は下記のように概略される。
以前の標準的な治療についての推奨に対する新しく提案された変化には印(*)をつけた。
重度の高カリウム血症
7.0mmol/l以上、そして、あるいは臨床症状とECG変化を伴う。
グルコン酸カルシウム(23%)の静脈内投与
0.5-1ml/kgで投与する。
電解質液の5リットルバッグに希釈し、30-60分以上かけて投与することができる。
カルシウム投与が速過ぎると不整脈が起こることがある。しかし、命の危険がある状態ではもっと速い投与速度が必要となりうる。
カルシウム投与は明瞭には血漿カリウム濃度を変化させないが、高カリウム血症の心臓への影響を和らげるために使われる。
下記の、中程度の高カリウム血症の治療は、重度の高カリウム血症の症例でも始める。
中程度の高カリウム血症
5.5mmol/l以上、そして、あるいは、臨床症状とECG変化を伴う。
等張液による利尿*
以前に推奨されていたのはまったくカリウムを含まない等張(0.9%)食塩液であった。
しかし、0.9%食塩液の酸性化作用はカリウムの細胞内から細胞外への移動を引き起こし得ることを研究結果が示唆している。
このカリウムの移動は適度(5meq/l)にカリウムを含んだ酸性化させにくい輸液a より有害かもしれない。
a:Normosol-R, Hospira, Inc.,Lake Forest,IL 60045
1時間に4-6ml/kgの市販の酢酸液の投与は輸液による利尿を引き起こすことができ、腎臓からのカリウムの排泄を増やす。
静脈内ブドウ糖投与
緊急状態では、静脈内ブドウ糖を、1分間に8-16mg/kg程度の速さで投与することができる。
実践的には、5リットルの輸液バッグに500mlボトルの50%ブドウ糖を加えて、平均的な500kgの馬に1時間ほどで投与する。
より緩徐なブドウ糖投与速度(1-2mg/kg/min)が、程度の軽い高カリウム血症では適切で、ひどい高血糖を引き起こす有害作用が少ない。
ブドウ糖投与は、自身のインスリン分泌を引き起こし、カリウムを細胞外から細胞内への移動させることで高カリウム血症を改善する。
静脈内インスリン投与
速い速度でブドウ糖を投与するのと組み合わせて使うなら、レギュラー・インスリン(100u/ml)を1時間に0.1-0.2IU/kg投与することができる。
さきに書いた実践的な方法と組み合わせるなら、500mlの50%ブドウ糖を入れた5リットルの等張電解質液にレギュラーインスリン0.5mlを加えることができる。
この輸液は、平均的な500kgの馬ならだいたい1時間以上かけて投与する。
さきに述べたように、インスリンはカリウムを細胞外液スペースから、細胞内液スペースへ動かすことを助ける。
著者は、血糖値をモニターできない状況でのインスリンの使用は推奨しない。
ひどい低血糖の結果は、高カリウム血症より明瞭で生命の危険となりうる。
ベータ作用薬*
ベータ作用薬の(吸入あるいは静脈内)投与は他の動物種でカリウム濃度を下げるとされてきた。
馬での研究が必要だが、同様の反応が観察されると思われる。
アルブテロール(180-900μg)の吸入が、呼吸窮迫で馬に投与することができ、高カリウム血症でも同じ開始ポイントになるであろう。
この薬物治療は迅速に投与でき、他の治療の開始前に遅れがあるなら命を救うことになるかもしれない。
インスリンと同様、ベータ作用薬はカリウムを細胞外から細胞内液スペースへ動かすことにより高カリウム血症を改善する。
フロセミド
静脈内輸液投与が始まったら、フロセミド投与(1mg/kg)が腎臓からのカリウム排泄を改善する助けになるかもしれない。
しかし、フロセミドは脱水がある馬には、適切な循環量の回復が達成されるまでは投与するべきではない。
加えて、フロセミドは、腎不全がある症例では慎重に使うべきである。腎機能のさらなる悪化につながるかもしれないからである。
フロセミドのCRI(continuous rate infusion)は、病院の環境で使うなら考慮されるかもしれない。
重炭酸ナトリウム*
高カリウム血症を治療するために、以前は重炭酸ナトリウムの早期の使用が唱えられていた。
臨床的な試験では、重炭酸ナトリウムの効果はないか、あるいは今まで挙げた治療より明らかに劣っている。
現時点では、重炭酸ナトリウムは高カリウム血症の第一線の治療法として、もはや用いるべきではない。
しかし、他の治療が満足いかない無反応の症例では考慮しうる。
to be continued.
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高カリウムだから生理食塩液!と思い込んでいたが、それは望ましくないという指摘。
ブドウ糖をもっと積極的に使うべきかも知れない。
ボログルコン酸カルシウムは、牛も診る私たちにはなじみがある。
フロセミドはかつては置いていたが、ほとんど使うことがないので・・・・・
アルブテロールも、緊急薬として使えるようにしておくべきなのだろうか・・・・・
インスリンは、ねえ・・・
重曹は、伝統的に、心情的に、使いすぎ。思っているような効果はないのかも。
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土曜日、
後頭骨骨折の骨片摘出。てこずると思っていたんだ。
当歳馬の後肢の跛行。骨盤まで撮影したが、明瞭な異常は不明。しかし、SAA600超。
子馬の跛行では細菌感染を疑え。まず、血液検査を!鉄則だ。
昼から繁殖雌馬の結腸捻転。
360°以上捻れていたし、浮腫もかなり。軽症ではなかった。
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大雨でした。
雷が怖くて、軒下にいたら、とうちゃんが玄関フードへ入れてくれました。
退屈だけど、雨宿りの場所としては一番気に入ってます。
おやつもここが一番もらえるみたいだし。