Quantcast
Channel: 馬医者残日録
Viewing all 1690 articles
Browse latest View live

第一趾骨の近位背側亀裂骨折のscrew固定

$
0
0

もう仕上がっている2歳馬が、強い調教のあとに跛行し、後肢球節に症状を示した。

その時はX線撮影で異常を認めなかったが、1ヵ月後に再度X線撮影したら第一趾骨近位背側内よりに亀裂骨折が見つかった。

摘出してしまうには大きすぎる。

細いscrewで固定するのが良いだろう、と判断した。

よくchip fractureが起きる部分だ。

放置すればなかなか骨癒合せず、また割れる可能性がある。

ピンポイントで狙う。

使っているのは2.5mmの月光ドリル。

斜めの面でも滑りにくい。

4.0mm海面骨screw用のタップでねじ山を切る。

4.0mm海綿骨screwは折れやすく、舐め易い。

原理だけではうまくいかない。実践的な手技が必要。

screw1本入れるのに神経を使い果たす。

                 /////////////

万年草。小さくても、あざやかな黄色。

                  

 


往診で蹄葉炎の深屈腱切断

$
0
0

産褥性蹄葉炎から慢性蹄葉炎になってしまった15歳の繁殖雌馬。

歩けないほど痛いわけではないが、もう子馬は大きくて抑えておくのはたいへんだし、

船底型のプラスチックシューを着けているが、外すのは装蹄師さんが居た方が良いし、

と、ベテランの先生に丸め込まれて、往診して手術することになった。

まあ、セリ期間中で、診療はそれほど混まないから大丈夫でしょう。

            -

右前肢はローテーションがひどい。

蹄骨の先端部は潰れ始めている。

ACSによるヒールアップは効果が出ているはずだが、蹄底も圧迫されているはずだ。

左前肢はローテーションはひどくないが蹄葉炎であることには間違いない。

プラスチックシューを着けたままX線撮影して、状態を確かめる。

数日でも状態が変ることがあるからね。

プラスチックシューを着けたままの方が、ヒールアップされているので深屈腱がゆるんでいて切りやすい。

毛を刈って、局所麻酔して、消毒して、深屈腱を切って、皮下織と皮膚を縫合して、包帯巻いて終わり。

               -

装蹄師さんにプラスチックシューをはずしてもらう。

このあとは裸足で管理できればそれが一番だ。

またX線撮影する。

状態を装蹄師さんにも見ておいてもらったほうが良い。

蹄骨は寝て、蹄骨の底部分で負重できるようになっている。

蹄底の一部が圧迫されることもなくなっている。

蹄尖部が伸びすぎないようにこれから管理を続ける必要がある。

蹄壁の中には感染している部分があるようなので要注意。

           ////////////////

こ~んな青を観て来た。

日本の渚100選のひとつで、こいつは用足ししましたけど・・・

 

育成馬の便秘

$
0
0

2歳馬が疝痛を起こして火曜日の夕方運ばれてきた。

前日夕方にも疝痛を示した、とのこと。

痩せている。食べるが太れない、筋肉もつかない。ときどき疝痛を起こす、とのこと。

火曜は食べさせないで様子を観ていたそうだが、超音波検査では小腸に内容があった。

胃カテーテルを入れたら、2リッターほど胃液の逆流があった。

左右の腹部にガスがあり、盲腸と大結腸が張っているのが超音波でわかった。

血液検査所見は悪くない。

落ち着いていたので、牧場へ帰って様子を観てもらうことにした。

               -

翌朝、まだ痛い、ということで再来院した。

状態はきのうとさほど変わらない。

しかし、もう開けてみた方が良い。

大結腸の便秘だった。

腹側結腸にはあまり乾燥した内容はなく、背側結腸に内容が多かった。

普通は、骨盤曲で便秘しがちなので、そこより上位の腹側結腸が膨満する。

背側結腸に内容が多いということは、そこより先の横行結腸とか、小結腸の通過が悪いのだ。

小結腸を探ると・・・・・

内容が多く、一番先では塊状のものが詰まっていた。

詰まっている部分は色が変わり始めている。

異物か?と思ったが、もみほぐせる。

肛門から浣腸してもらって、直腸の方へ推送した。

横行結腸も空にして触ったが、とくに閉塞させているようなものはなかった。

                  ---

育成馬が便秘を起こすことがあるが、いくつか要因がある。

ひとつは運動の休止だ。

多くの育成場は日曜日に騎乗運動を休む。

それで覿面に月曜に便秘疝が多くなる。

今回の馬は、それが重症で火曜まで長引き、水曜には開腹することになった。

胃液逆流があるようだと、下剤をかけるわけにはいかない。

小結腸に便秘塊が詰まって変色し始めているようだと手遅れになったら馬は死ぬ。

日曜日にもウォーキングマシーンには入れるとか、曳き運動はするとか、できれば良いのだが。

                    -

敷き料に麦わらを使っている育成牧場も便秘疝が多い。

馬が食べるからだ。

麦わらは敷き料としては最高なのだが、馬が食べると便秘しやすい。

馬が食べてしまうのは、他に食べるものがなくなるからだ。

麦わらを使うなら、馬が食べないように牧草を充分与えた方が良い。

食わせ放題に食わすと太るし腹ボテになるので難しいところだが、麦ワラを食べているのはマズイ。

                    -

便の性状と量、そして飲水量はいつもチェックする必要がある。

便が硬いようなら、便秘を警戒しなければならない。

運動させる。

濃厚飼料、切り草など便秘し易い飼料は減らす。

青草を与える。

塩を与えて、水を飲ませる。

口カゴして絶食させる。

などの対処で「便が固め」程度のうちに解消できるはずだ。

週明けに疝痛が多い育成牧場は、馬の扱いを考え直す必要がある。

                ///////////////////

英国一家、日本を食べる 上 (角川文庫) 寺西のぶ子 KADOKAWA 英国一家、日本を食べる 下 (角川文庫) 寺西のぶ子 KADOKAWA

この本はよく売れたらしい。

おいしいもの大好きのイギリス人一家が、日本でさまざまなものを食べた記録。

アングロサクソンは味音痴が多いらしいが、この人はそうではないらしい。

そして、うまければ何でも良いのではなく、健康に良いものを食べることに熱心だ。

日本食は、日本人が世界に誇って良いもののひとつだ。

               

 

 

北里大学での講義 獣医衛生学 馬の管理衛生

$
0
0

北里大学へ講義に行ってきた。

講義棟が新しくきれいに、そしておしゃれになっていて驚いた。

4年生対象の獣医衛生学の一コマ。

獣医衛生学とは、家畜の飼い方や管理方法で防げる病気にはどのようなものがあり、どうすれば良いかを学ぶのだが・・・

私はサラブレッド生産地では、馬がどんな診療を受けていて、どんな病気で死んでいて、それを防ぐにはどうすれば良いか、について話した。

どういうわけか、今回は割りとまじめに聴いてもらえたように思う;笑

あとで何人かの学生さんが質問に来た。

臨床実習についても尋ねられたし、

「面白かった・・・・」と言ってくれた学生も居た。

                   -

講義棟の掲示板には、臨床実習の案内や、就職情報が貼られている。

われわれの職場もリクルートに力をいれないといけない時代になっている。

新卒獣医師の供給源は獣医科大学しかないので、大学へ出かけていって、自分達の仕事について話す機会は増やすべきなのだろう。

                   -

太鼓の音を聞きながら、八戸城跡を歩いた。

好い時間だった。

出張続きで

$
0
0

月曜・火曜と苫小牧で所長会議。

ホテルで眠れず疲れる。

水曜は雲海を越えて、

十勝へ。

毎年頼まれている馬の疾病対策の講習。

広大な牧場の入り口でノウサギが歓迎してくれた・・・・・3時間かけて走ってきたんだからね。

今年の参加者は22名。全部NOSAIの獣医さんだった。

ほとんどが今年の新規採用者。

うちの会社の新人さんも5名居て驚いた;笑

                      -

講習後、場内のバスツアーに同行させてもらった。

展望台には重種馬たちが集まっていた。

若い獣医さんたちも馬に魅かれるようだ。

馬も”診れる”獣医さんになっていただきたい。

EE、RLN、Colic

$
0
0

出張続きで、しばらく手術していなかった。

診療がしたい。

私はやはり臨床が好きだ。

と、思い直せるのは出張がつづいたおかげ;笑

                -

復帰明けは、1歳馬のEE 喉頭蓋捕捉。

まだ充分には馴致できていない1歳馬だし、鼻や喉も狭いので、EEカッターではなくlaserで切開することにした。

喉頭蓋にやけどをさせないように、手製の鈍なフックで喉頭蓋を覆っている喉頭蓋下粘膜をlaser切開した。

披裂喉頭蓋ヒダも切開を加えておく。

                -

つづいて、

4歳現役競走馬の喉頭片麻痺のTieback&Cordectomy。

近年は「喉頭片麻痺」ではなく、反回神経喉頭枝神経症?RLNと呼ぶことが提唱されている。

安静時の内視鏡検査では、GradeはⅡbかⅢaだった。

超音波検査では、かなりな左輪状披裂筋の変性と萎縮が評価された。

しかし、手術が絶対に必要か決断できなかったので、OGE(騎乗中喉頭内視鏡検査)をやってもらった。

結果、見事な左披裂軟骨と声帯の虚脱が確認された。

で、

喉頭形成手術と声帯切除手術をすることになった。

                -

夜、起こされた。

2歳馬の疝痛とのこと。

来院しても立っていられないほど痛い。

開腹したら空腸が捻転していた。

腸間膜を軸に捻れて、ひどい胃拡張を起こすほど閉塞していたが、空腸はまだ壊死していなかった。

胃はパンパン。

おそらく固形物が多くて、胃カテーテルを入れてもほとんど減圧できなかっただろう。

手術中に逆流していた胃液は赤味をおびていた。

覚醒室でも、入院厩舎へ行ってからも、ゲップし続けていた。

                    //////////////

その朝、助けられなかった患者さん。

窓に激突し、即死だった。

コゲラだね。

朝の惨劇だった。

 

 

胸下の血腫切開後の結合織切除

$
0
0

梅雨がないと言われる北海道だが、本州が梅雨明けする頃にぐずついた天気が続くことがある。

このところ、気持ちよく晴れることがない。

おまけに、蒸し暑い。

と言っても、この辺りは30℃にはならないのだが。

             ー

入院厩舎の中もジトジト。

水を撒いたわけでもないのに、廊下は濡れ、敷き藁もベチャベチャ。

小腸捻転だった2歳馬クン。

            ー

日曜日は、2歳馬の胸下の結合織切・縫合手術。

1月に胸下に血腫ができ、

4月に切開し、

5月にはこうなっていた、とのこと。

慢性化してなおらないんだね。

胸前を打撲して血腫ができると、この胸下に腫れが下がることが多い。

それ以上、下がるところがなく、自然に吸収されると良いが、そうでないと自潰したり、結合織の塊ができたりする。

切開して順調に治る馬も多いのだが・・・・・

人でもケロイド体質と呼ばれる傷がきれいに治りにくい体質の人がいるようなので、

馬でも個体差があるのかもしれない。

非腫瘍性石灰沈着

$
0
0

1歳馬の大腿部外側。

触ると、はっきりと板状の硬いものに触れる。

一次は”鶏足”のような跛行をしていたそうだ。

おそらく、筋膜か筋繊維の損傷があって、その部分に石灰沈着が起きたのだ。

切開して摘出することになった。

触った感触で思うほど簡単ではない。

どうも大腿部が損傷を受けると石灰沈着することがあるように思う。

再発しないことを願う。

                                    ー

暑い、蒸し暑い。

夜になっても暑い。こんなことは北海道では珍しい。

とくにこの地方では何年に一度かだろう。

だけど大阪で、まだエアコンが普及していない時代に育ったからね。

免疫がある・・・というよりは根性がちがう;笑

                                ////////////////

アジサイが咲いてるけど。

紙のように丸まっている。

水不足だね。水やりしないと。

             ー

ディープインパクト。

名馬の冥福をお祈りする。

 


1歳馬の網嚢孔ヘルニア

$
0
0

夜、9時過ぎに呼ばれた。

1歳馬の疝痛、とのこと。

例によって、もう麻酔が始まるところで、術野の準備と手術器具の用意を併行してやって、すぐに開腹する。

小腸の閉塞で、腹囲の膨満が強い。

そして、その馬は腹膜下脂肪が驚くほど厚かった。

腹腔内で回腸を探り当てることができたので、回腸から小腸を引っ張り出す。

空腸がどこかへ入り込んでいる感覚があったが、苦労しないで引き出せた。

入り込んでいた部分は傷んでいるが蠕動がある。

色調も悪いし、腫れてもいるが・・・・・回復しないかしばらく観察していたが、

どんどん正常な色に戻るということはなかった。

温存すれば、手術後に壊死するかもしれない。

3.2m切除して、吻合した。

しかし、その頃から全身状態が悪くなった。

腹腔内に出血がある。

シリコンチューブを入れて吸引したが、8リットル以上吸引された。

口粘膜は貧血とチアノーゼ。

網嚢孔(ウィンスロー孔)ヘルニアでは、腸管を引き抜くときに肝臓や門脈が裂けることがある。

その出血は止める方法がない。

なにせ、腹腔の背中側で、孔の中だ。

輸血の準備も考えたが、出血の量を考えると間に合わないし、止める方法がないなら虚しいだけだ。

そして、馬は死んでしまった。

                  //////////////

暑い・・・・

暑い・・・・

でも腹は減る。食欲は落ちない;笑

 

夏期実習生の皆さんへ

$
0
0

今日も暑い。

が、晴れて、風があるので少しは好い。

曇っていて蒸し暑いのは耐えがたい。

           ー

夏の実習生が来る季節になってきた。

JR日高線は走っていません。(もともと「電車」じゃないし;笑)

代行バスが運行されていますが、国道を離れてJRの駅へ入っていくのでひどく遅いです。

千歳空港か札幌から浦河行きのバスが出ているので、それに乗って来るのが良いと思います。

千歳空港からの浦河行きのバスは1本しかないので、飛行機もその時間に合わせた便を予約すると良いです。

苫小牧から浦河へは直通バスはなくて、静内で乗り換えになるようです。

バス停についたら電話ください。迎えに行きます。

「お父さんに、実習先への交通手段を問い合わせてもらうのはやめた方が良いです。

家庭の教育と大学生としての成熟度を疑われます。」

           ー

着いた日と翌日の食べ物は持ってくると良いです。

実習中はコンビニなどに車で連れて行きます。

たいていの期間、数名の実習生が居るので、一緒に自炊すると楽しいと思います。

何を食べてイイかわからないとか、食事の用意なんかできない、という人はいままでの生活を考え直した方が良いです。

           ー

「集合時間はありません。学校の行事ではないし、団体行動ではありません。」

でも、実習前日に、遅くならない時間に来るのが常識でしょ?

           ー

訊きたいことがあれば電話をかけてきて構いませんが、要領よく目的を果たせるよう電話して下さい。

「あの~ワタシ・・・何訊けばいいんでしょ?」みたいな電話とか、「また電話してイイですか?」という小学生がするような電話の練習の相手はしたくありません。

到着予定時間も業務時間内なら、こちらは聞いておく必要はないと思います。

そのために体を空けておいたりしないし、バス停で待ってたりしないし、予定の時間に来なくても問い合わせたり探したりもしません。

           ー

持ち物は、生活道具と実習に必要な物です。

着る物は、白衣でも、スクラブでも、ツナギでも構いません。

長靴は特別なサイズでなければ貸すこともできます。

聴診器はあったら持ってくると良いです。

          ーーー

タフでなくても出来る獣医師の仕事は多いですが、大動物臨床獣医師はタフで、世界中どこでも環境が整っていないところへ行ってでも活動できるような能力があれば望ましいです。

学外実習は、大学で学ぶ獣医学だけでなく、自分の生活力や生き方を見直すきっかけにもなると思います。

大学入試も獣医師国家試験もマークシートになっていますが、社会に出て働き生活していくとき、あなたの目の前に置かれるのはマークシートではないのです。

           ////////////

おっ?お~?これってあれだよね。

今は、そこがどんなとこかネットで下調べできるはず。

便利だけど、つまらない世の中になったのかもしれない。

 

 

 

 

 

午後に腸管手術を2頭

$
0
0

近頃、早朝に教科書の原稿を書いている。

締め切りは半年前からわかっちゃいたが、春にはとても執筆作業なんてできない。

数日のうちにカンファレンスと学会のスライド提出の締め切りもある。

                 -

午前中、種雄馬の下顎のコブとり。

立ち上がると危ないので外でやったが、大人しい種馬だった。

                 -

午前中のもう1頭は1月に第一趾骨の底側突起から関節面にかけての骨折をスクリュー固定した1歳馬。

まだFlex testすると跛行する。

ひどい靭帯損傷があったはずなので、あとは運動量を増やしてどうなるかやってみるしかないと判断した。

                 -

午後はのど鳴りの手術の予定だったのだが・・・・・

1歳馬の疝痛の依頼。

来院したら、小腸が膨満していた。

開腹したら回盲部の重積だった。

重積部を引き抜いて、回腸を盲腸へ側側吻合した。

                 -

そのあと繁殖雌馬の疝痛の依頼。

帝王切開歴があり、昨年夏には結腸捻転を手術してcolopexyしている馬。

来て超音波検査すると、体表から結腸動脈が見えるし、腫れ上がっている。

結腸壁が分厚い部分もある。

開腹したら結腸捻転の再発だった。

colopexyははずれてしまっていた。

                 -

終わって夜7時半。

やれやれ。

原稿書きは間に合うのか?;笑

              ////////////////////

とうちゃん、原稿書きてつだってやるから  夕方はオラを夕涼みに連れて行け

 

蹄葉炎の深屈腱切断術と蹄処置

$
0
0

6月から両前肢が蹄葉炎になってしまった繁殖雌馬。

妊娠している。

今日は、先にデ・ローテーションさせた接着装蹄をしてから深屈腱を切ることになった。

手術を先にして蹄が濡れると、接着装蹄ができなくなるから。

しかし、わずかな時間とはいえ、深屈腱がつながっている状態でデ・ローテーションさせるので、良いアイデアかどうかわからない。

左前は装蹄が終わって、深屈腱を切ったところ。

右前はこれから接着装蹄するところ。

獣医師と装蹄師のコラボレーションの図。

左前は蹄内に感染巣があるのがX線画像でわかったので、蹄尖をかなり切ってもらって排膿させた。

Good Job !!

                                      ////////////

きょねんの秋に球根を植えたユリが咲き始めた。

しかし、あまりに花がおおきくてケバイ。

園芸種として改良されてこうなんだろうけど。

野に咲く花の方が好きだな。

 

 

 

brand-new arthroscope !!

$
0
0

7月から関節鏡手術セットは新品になっている。 

25年ブラウン管モニターで手術してきた。

液晶は薄くて軽くても、画質自体は優位性はないと思ってきたから。

しかし、有機ELモニターは驚くほど鮮明。

そして、カメラ自体の性能が上がっているので、今までのカメラでモニターだけ替えても鮮明ではなかった。

で、

Brand-New!!

                 -

きのうは、午前中、2歳競走馬の軸外骨折 abaxial fracture。

これは近位-遠位で角度をつけるとうまく描出できる。

骨片は変位して段差ができていた。これは珍しい。

繋靭帯付着面の骨折なので、靭帯繊維をメスで切っておいてから、骨片を摘出する。

断面には骨片と軟骨片があったが、それもきれいに取る。

靭帯の断面。

この馬は、種子骨骨折だけでなく繋靭帯そのものも傷めてしまったようだった。

その様子も関節鏡で、種子骨周辺のわずかな出血として観察できた。

そして、外側の繋靭帯も腫れていた。

X線撮影でも骨片がなくなり、破片が残っていないのを確認して終了。

                    ---

午後も関節鏡手術だった。

1歳馬の脛骨内果のOCD。

獣医さんの年収くらい購入費用がかかったので、しばらくは器械代だけを稼ぐことになります;笑

                   /////////////////

甥っ子夫婦が遊びに来たので、

世界で一番おっきな絵を観て、

乗馬トレッキングして、

アザラシ観て、

かんらん岩のお勉強して、

と日高を周りました。

もちろん馬の病院も観ましたとも;笑

この地域は観光でも魅力たっぷりだと思う。

それも名所を観て行き過ぎるのではなく、ゆっくり滞在してリフレッシュする時間を過ごすのが良いのではないだろうか。

 

 

false colic 腹壁血腫

$
0
0

きのうからサマーセール。

セリ期間中は、診療は暇。なはずだったのだが・・・・・

朝、繁殖雌馬の疝痛の依頼。

どうやら予定の関節鏡手術より遅れて来院するようなので、関節鏡手術を先に終わらせることにする。

4歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術は順調に終わった。

その間、疝痛の繁殖雌馬は落ち着いてはいるが、まだ痛みがあるらしい。

右膁部でおかしな超音波像が観えた、とのこと。

関節鏡手術に続いて私が執刀する。

開腹したら・・・・・・右腹壁の血腫だった。

馬は大量出血すると疝痛症状を示すことがある。

腹腔内には出血はない。

腹腔内から触っても、破れている所はなさそうだ。

腸管が入り込んだりもしていない。

その間に、別な繁殖雌馬の疝痛の依頼。

来院したら、落ち着いてはいるものの、まだ痛いらしい。

血液検査でも乳酸値が1.8mmol/lと高い。

昨夕からの疝痛で、今朝は昨夜より痛い。

開腹したら、索状物を小腸の大半がくぐり、特に空腸上位は膨満していた。

腹腔内で索状物をはさみで切ったら絞扼は解消された。

                  -

セリ期間中は診療が暇になるので、実習生の受け入れは控えていたが、

ひとりだけ残っていたM君、大活躍。

いや~君が居てくれて良かったナ。

                  -

午前中から、吸入麻酔をかける手術を3頭続けて疲れた。

                ////////////

相棒は8/9から左後肢を傷めて元気がない。

数日は着けないほど痛かったのだが、徐々に良くなりつつある。

7歳にしては顔も白くなっていないと思うが・・・・

よく観ると白い毛が口元や、

目元に出てきたようだ。

体の皮下には脂肪腫もできている。

元気で長生きしてくれよ。

 

 

危険なデベソ 

$
0
0

きのうは午前中、競走馬の中手骨外顆骨折のscrew固定を予定していた。

が、朝、1歳馬が臍が腫れて疝痛をしている、との依頼。

腫れた臍の中には分厚くなった腸管が見える、とのこと。

夜間放牧されていて、夜中から痛かったらしく、顔を擦りむいている。

これは後回しにはできない。

臍で締め付けられた腸管が破れたら、救えない腹膜炎を起こす。

腫れた臍。

皮下織もひどく厚くなっている。

中の腸管を傷つけないように慎重に切開した。

中の腸管は緑色がかっている。

こうなっていると押し戻して、臍を閉じる、などという簡単な手術ではすまない。

臍輪から切り広げ、腸管手術になる。

壊死部を含めて50cm切り取って、端端吻合した。

臍に入り込んでいたのは回腸だった。

閉腹には注意が必要。

腹膜の延長であるヘルニア嚢を切り取っておかないと、ヘルニアのまま治ってしまう。

                 -

午後は繁殖雌馬のフレグモーネからの関節炎?が準急患で来院した。

さらにもう一頭、結腸の便秘と捻転の開腹手術後の競走馬が便秘になって来院した。

そして、2時から蹄骨伸筋突起の骨折のscrew固定、これも準急患。

それが終わってから、朝一に予定していた中手骨骨折のscrew固定をやることになった。

                 -

誰だ、セリ期間中診療は暇って言ったヤツは・・・・・

             ///////////////////

朝夕はすっかり涼しくなった。

夏も終わりだな。

 

 


蹄骨伸筋突起骨折

$
0
0

2歳馬が蹄骨の伸筋突起を骨折した。

すでに競走していて勝ってもいる。

伸筋突起の骨折は小さければ関節鏡で摘出することもあるが、これは大きすぎる。

放置すると蹄関節がDJD変形性関節症を起こす。

翌日手術することにした。

いつもは紐を蹄や繋に巻いて、肢をぶら下げて球節や腕節の手術をしている。

しかし、蹄冠部を手術するため、蹄や繋に紐を巻くわけにはいかない。

それで、蹄に粘着テープを巻いて、手術台のフレームに固定した。

ホイストでぶら下げるより安定する。

しかし、背-掌方向の撮影ができない・・・・

蹄関節にスパイナル針を刺しこんで、位置と角度の目安にする。

ここぞという位置と角度で2.5mmドリルを当ててX線撮影してもらう。

手が被曝するのは仕方がない。

ドリリングしたが、蹄骨は手根骨や足根骨に比べると軟らかい。

スカスカの軽石のような骨なのだ。

それでも掌側の緻密部だけは硬い。

できるだけ長い4.0mm海綿骨screwを入れたかったが、これは長すぎた。

26mmを入れてしっかり締めた。

骨片は圧迫固定されているし、関節面もぴったり合っている。

術後はキャスト固定することにした。

AOの指南書ではキャスト固定するようには指示されていない。

しかし、キャスト固定しておいた方が安全だろう。

この骨片もscrewもさほど丈夫なものではない。

                 /////////////

サマーセールもきのうで終了。

記録的に暑くなったけど短かった今年の夏。

楽しめましたか?

 

新生子牛の股関節脱臼

$
0
0

土曜日、午前中は競走馬の腕節の関節鏡手術。

以前に同じ関節の関節鏡手術を受けている。

新たにまた骨折したのではなく、DJD変形性関節症が進行したようだ。

             -

昼は血液検査業務。

と思っていたら、生まれたばかりの黒毛和種子牛が股関節脱臼し、一度は整復できたものの、起立させたらまたはずれ、

今度は整復できない、とのこと。

来院したら、腰角のすぐ尾側がぼっこり膨らんでいる。

そこに大腿骨大転子が来ているようだ。

本当は、股関節はもっと尾側で、大転子はさらにその尾側にある、べき。

DRでX線撮影してみる。

患側を上にして撮影しているので、拡大されて大きい方が患側。

左大腿骨骨頭が、頭背側へ逸脱しているのがわかる。

仰臥でも撮ってみた。

牛の股関節脱臼で一番多いとされている頭背側脱臼だ。

前肢を枠場の根元に縛りつけた。

患肢には産科チェーンを着けて、尾側へ思いっきりひっぱった。

が、戻せない。

一人が患肢をひっぱり挙げて、内側へ思いっきり捻り、その状態で、大転子部を尾側へ押したら、

入った!!

X線撮影したら、入っているのが確認できた。

仰臥で撮影しても大丈夫なようだ。

腰角近くに何か写っている。骨膜の靭帯付着部などがちぎれたのだろう。

円靭帯も切れているはずだし、股関節周囲の靭帯も切れているし、関節包も破れているはずだ。

あとは再脱臼しないように、左右の後肢を飛節の上で伸縮包帯を巻いてつなぎ、さらにその上を粘着テープで飛節を屈曲させた状態で固定した。

トラックに乗せたら、後肢をばたつかせたので、さらに左後肢だけは球節を屈曲させた状態でテーピングテープで固定した。

                    ---

私は子牛の股関節脱臼を診療すること自体が2頭目。

電話連絡をもらってから、教科書や文献をあわてて読んだ。

数日経ってしまうと整復するのは困難になるし、骨頭切除をしても長期予後は芳しくないらしい。

再発せず、うまく治ってくれると良いのだが。

                                         -

と祈ったのだが、この子牛は翌々日には誤嚥性肺炎で死んでしまった。

股関節も再脱臼していたようだ、とのこと。

とくに事故でもなかったのに股関節脱臼したことから、股関節の形成不全があったのかもしれない。

 

    

北海道産業動物獣医学会2019から戻ってみれば・・・・・

$
0
0

今年の北海道獣医師大会&産業動物獣医学会は北見工業大学のキャンパスを借りて行われた。

オホーツクの先生方をはじめ開催の労をとられた先生たちのご努力のおかげで、ローカル色のある楽しい学会だった。

3泊と長かったこともあって、職場の仲間と懇親を深めることもでき、その点でもたいへん有意義だった。

この地域から参加した獣医師も、ほとんどが研究発表も行い、それもそれぞれに工夫と努力がされていて感心させられた。

たいしたもんだ。

               -

長距離を走って帰ってきたら、馬運車が何台も止まっている。

どうした?と覗いたら、開腹手術が始まるところだった。

仕方がないので手伝う。

先の手術の1歳はまだ覚醒室で立てない。

その間に、予定の腕節血腫の1歳馬を診察する。

続いて、肢軸異常の当歳馬の診察。

そして、中手骨骨折の子牛の診療依頼を私が受けたので、仕方なく5時過ぎまで待つ。

入院厩舎には疝痛馬が2頭入っていた。

おかしいな、もう9月になると言うのに・・・・・・

             //////////

学会が終わった日、北の大地の水族館に寄った。

水族館の魚ってシュールで面白い。

誰かに似てるような気がしたりするんだな、これが。

 

北海道産業動物獣医学会から戻って part2

$
0
0

学会から戻った翌日は日曜日。

午前中、飛節OCDの関節鏡手術。

午後、外傷後の肉芽の診察。

入院厩舎にPOI術後イレウスの繁殖雌馬が入院していた。

               -

手術は観ていないが、かなり厳しい状態だったらしい。

翌早朝、状態が悪いので呼ばれた。

胃液の逆流があり、フルニキシンに反応せず、鎮痛剤も効かない。

あきらめた。

そのまま剖検したが、ひどかった。

これでは助かる可能性はまったく無い。

             -

片付けて、朝食を採っていたら、また疝痛の依頼。

来院したら腹囲膨満がひどい。

血液はさほど悪くない。疝痛もすこし落ち着き気味。

様子を観ながら、予定の関節鏡手術を先に済ませることにした。

             -

関節鏡手術の間も、疝痛は続き、便もガスもまったく出ない。

これはもう開けてみないとダメだ。

開腹したら、頭にあったひとつの小結腸閉塞だった。

小結腸の腸間膜に大きな孔が開いていて、小結腸がそれをくぐることで捻れていた。

短冊に切ったコンニャクに切れ目を入れて、くるんとそれに端を通すと捻れるでしょ?あれとおんなじ。

3人がかかりで、なんとか小結腸腸間膜の孔は全部縫えた。

終わって午後1時。

              -

2時からは3歳馬のTieback&Cordectomy。

きのうから、新たな実習生が4名来ている。

1名はスリランカからのDr.

英会話と英語専門用語の良いトレーニングになる。

             /////////////

ピラルクーに負けない存在感がいいよね。

子牛の剖検もしたんだった。

第四胃捻転だった。

早く手術すれば助かったかもしれないが、診断が難しいよね。

あ~忙しかった。

 

 

 

 

3ヶ月子牛の中手骨成長板損傷S-H2

$
0
0

北海道獣医師会から戻ってきたその日、3ヶ月齢の黒毛和種子牛が球節を脱臼しているようだ、との電話依頼。

忙しい日で、出張から戻ってきた私が電話に出たのだった。

綿包帯を巻いて、添え木(副木)を肘から肢先まで当てて、しっかりしたテープでグルグル巻きにして連れて来るように指示した。

添え木の先は蹄尖よりも先へ出しておくと好い。

                    -

来院したら子牛は副木を使って上手に歩いている。

仮固定の仕方としては完璧。

そのままX線撮影したら・・・中手骨遠位成長板の離解だ。

わずかに三角の部分があるので、Salter-Harris 損傷の2型だ。

                    -

鎮静剤を投与して牛を寝かせる。

ドリルで蹄尖に孔を開けて針金を通し、それにロープを通して肢を引張る。

その状態でずれてしまっている成長板を整復する。

整復した獣医さんによると、はまった感覚はなかったそうだ。

X線撮影して、整復できているかどうか判断する。

子牛の横骨折だと、多少のずれがあっても骨癒合するとされているが、

成長板がずれていると、成長するための軟骨が機能できず、あるいは片側だけが骨癒合してしまい、肢が短くなったり、曲がってきたりしかねない。

完全な整復ができていたので、筒状の伸縮包帯を肢に履かせる。

キャストトップと球節と副蹄の下だけはエバウールシートで保護する。

子牛のキャスト固定では綿包帯はいらない。

キャストを巻いたら、またX線撮影してキャストの中で骨折が変位せず外固定状態も良いことを確認する。

                  -

基本的には蹄尖まで完全に覆う。

そのことでキャスト内で肢が動かない。

蹄が露出しているとキャスト内で肢が動き、キャスト擦れの原因になり、荷重が骨折部にかかってしまう。

下巻きとして綿包帯を巻いていないので、キャストが肢にフィットしている。

わずかに浮いて見える球節背側と副蹄遠位と副手根骨部はエバウールシートを当てているからだ。

              ー

牛のキャスト固定もできればX線画像を確かめながら処置を進められる所でやるのが良いと思う。

DRなら牧場へ持って行けるし、CRのあるところへ子牛を運んでしまうのも方法だろう。

そして、獣医師が複数で処置に当たれれば治癒率は向上させられる。

結果的に巻き替えやキャスト擦れの処置に通ったりする手間を減らせるのではないだろうか。

今回の北海道産業動物獣医学会で発表があった。

北海道で年間500頭近い子牛の骨折のカルテが家畜共済で扱われている。

部位により治癒率は大きく異なる。

わが地区の治癒率は優秀だ。

            //////////

滝壺をのぞけたら・・・・という水槽。

 

 

 

Viewing all 1690 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>