2歳馬が疝痛を起こして火曜日の夕方運ばれてきた。
前日夕方にも疝痛を示した、とのこと。
痩せている。食べるが太れない、筋肉もつかない。ときどき疝痛を起こす、とのこと。
火曜は食べさせないで様子を観ていたそうだが、超音波検査では小腸に内容があった。
胃カテーテルを入れたら、2リッターほど胃液の逆流があった。
左右の腹部にガスがあり、盲腸と大結腸が張っているのが超音波でわかった。
血液検査所見は悪くない。
落ち着いていたので、牧場へ帰って様子を観てもらうことにした。
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翌朝、まだ痛い、ということで再来院した。
状態はきのうとさほど変わらない。
しかし、もう開けてみた方が良い。
大結腸の便秘だった。
腹側結腸にはあまり乾燥した内容はなく、背側結腸に内容が多かった。
普通は、骨盤曲で便秘しがちなので、そこより上位の腹側結腸が膨満する。
背側結腸に内容が多いということは、そこより先の横行結腸とか、小結腸の通過が悪いのだ。
小結腸を探ると・・・・・
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内容が多く、一番先では塊状のものが詰まっていた。
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詰まっている部分は色が変わり始めている。
異物か?と思ったが、もみほぐせる。
肛門から浣腸してもらって、直腸の方へ推送した。
横行結腸も空にして触ったが、とくに閉塞させているようなものはなかった。
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育成馬が便秘を起こすことがあるが、いくつか要因がある。
ひとつは運動の休止だ。
多くの育成場は日曜日に騎乗運動を休む。
それで覿面に月曜に便秘疝が多くなる。
今回の馬は、それが重症で火曜まで長引き、水曜には開腹することになった。
胃液逆流があるようだと、下剤をかけるわけにはいかない。
小結腸に便秘塊が詰まって変色し始めているようだと手遅れになったら馬は死ぬ。
日曜日にもウォーキングマシーンには入れるとか、曳き運動はするとか、できれば良いのだが。
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敷き料に麦わらを使っている育成牧場も便秘疝が多い。
馬が食べるからだ。
麦わらは敷き料としては最高なのだが、馬が食べると便秘しやすい。
馬が食べてしまうのは、他に食べるものがなくなるからだ。
麦わらを使うなら、馬が食べないように牧草を充分与えた方が良い。
食わせ放題に食わすと太るし腹ボテになるので難しいところだが、麦ワラを食べているのはマズイ。
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便の性状と量、そして飲水量はいつもチェックする必要がある。
便が硬いようなら、便秘を警戒しなければならない。
運動させる。
濃厚飼料、切り草など便秘し易い飼料は減らす。
青草を与える。
塩を与えて、水を飲ませる。
口カゴして絶食させる。
などの対処で「便が固め」程度のうちに解消できるはずだ。
週明けに疝痛が多い育成牧場は、馬の扱いを考え直す必要がある。
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英国一家、日本を食べる 上 (角川文庫)
寺西のぶ子
KADOKAWA
英国一家、日本を食べる 下 (角川文庫)
寺西のぶ子
KADOKAWA
この本はよく売れたらしい。
おいしいもの大好きのイギリス人一家が、日本でさまざまなものを食べた記録。
アングロサクソンは味音痴が多いらしいが、この人はそうではないらしい。
そして、うまければ何でも良いのではなく、健康に良いものを食べることに熱心だ。
日本食は、日本人が世界に誇って良いもののひとつだ。