夜、疝痛の連絡。
分娩して5日目の繁殖雌馬が疝痛で、「子宮穿孔じゃないか」と言われたとのこと。
分娩後不調で、きのうは下剤を投与したとのこと。
子宮穿孔による腹膜炎なら夜中に手術しないでも良いかもしれない、しかし疝痛もかなりひどいとのことなので来院してもらうことにした。
子宮穿孔による腹膜炎の開腹手術となると腹腔洗浄用の生理食塩液を大量に温めておかなければならない。
来院して、血液検査したら、白血球減少がない。ひどい腹膜炎とは思えない。
超音波画像診断では・・・重度の小腸閉塞だ。
胃拡張もある。
胃カテーテルを入れて胃液を回収した。
小腸閉塞に下剤を投与しちゃいけない。害があるだけ。
成馬の小腸閉塞は術者ひとりでは手に負えないことが多い。
膨満して重たくなった20メートル以上の小腸を1人では扱えないのだ。
3人目の当番者も招集して開腹手術する。
開腹すると黄色い粘りの強い腹水があり、腹膜炎ではあったが、大量の腹水がある腹膜炎とは様子が異なっていた。
空腸の腸間膜が破れてその部分の空腸が壊死したことによる小腸閉塞だった。
壊死していたのは20cmほどだったが、腸間膜に走っている血管の走行を確認して、血行が途絶えない部分で吻合するため1m切除する。
その前に、切除する腸管を廃液ホースとして使って小腸全体の内容を抜いておかなければならない。
そのときできるだけ腸管を手でしごきたくない。
擦るだけで漿膜が傷んで癒着の要因になるからだ。
とくに膨満していたり、腹膜炎があると術後の癒着が問題になる。
内容を抜いてしまえば、あとは健康な空腸の断端を吻合し、腸間膜の裂孔を閉じれば良い。
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馬を入院厩舎に入れて、やっと眠ったら電話が鳴った。
「どうだ~?」
状況を説明したら、「じゃあダメだな」。
「いやいや、明日の状態にもよりますけど大丈夫だと思いますよ」
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翌日から腹腔ドレナージが必要かと思ったが、その必要はないようだった。
子馬を連れて来て一緒にし、食べられるようになって帰っていった。
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忙しい季節、少し時間があると「狩人と犬、最後の旅」を細切れで観たりする。
アラスカでワナ猟師として暮らす男の1年。
もう仕事と暮らしを続けていけないかな、と引退を考えながら迷っている。
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フランスではヒットしたらしい。
そのことだけでチョット、フランスを見直したりする。
