キャビネットの中にしまってあった古いX線フィルムを捨てた。
今は、X線画像はデジタル化されてサーヴァーに保存されている。
日付、牧場名、馬名、部位などで検索もできる。
しかし、それ以前はX線フィルムで保管しておくしかなかった。
何もか置いてあったのではなく、興味ある症例や、珍しい症例や、難しい手術症例などをしまってあった。
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1例でも症例報告にはなるかな、という症例もあった。
同じような症例が2-4症例集まれば立派な症例報告になっただろう。
しかし、今さら、だ。
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CRのフィルムはけっこう経年劣化していた。
情報はデジタル化して保存し、バックアップをとっておかないと永久保存にはならないね。
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どういうわけか20年ほど前の症例が多かった。
その頃はCRでプリントアウトして保存するしかなかったのだ。
X線透視装置もなかったので、手術の最中もX線撮影し、プリントアウトして手術室のviewerで確認しながら手術を進めていた。
そのうちX線透視装置を使うようになって術中X線撮影の回数は減り、今はDRのモニターで確認しながら手術を勧めるようになっている。
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20年ほど前の手術の様子をX線画像で見ると、ヘタだ。
頑張ってやったな~とも思うが、今ならやらないようなできの悪さもある。
一方、挑戦的だったなと思い出させる症例もいくつかあった。
種子骨骨折をワイヤー固定して治っていたり、
後膝関節の思い切り近位にOCDがあるのを摘出していたり、
脛骨近位成長板骨折を旧式のTプレートで固定していたり、
手根中手関節の骨折をTプレートで固定していたり、
中足骨内顆からの螺旋骨折をscrew固定していたり、
etc.
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もうなくなっている牧場が多いのにもしみじみ思わされる。
もう今はない牧場からの症例でもずいぶん経験を積ませてもらった。
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世の中には公式に記録されていなかったり、報告されていなかったり、資料が残っていないことも多くあるのだろう。
馬臨床の世界では、記載されていくことの方が少ないくらいかもしれない。
そして、記憶もまた消えていく。
このブログもいずれ消えます。