今シーズン初の帝王切開
0:04 初産だが、骨盤骨折歴がある馬で、産道が狭くて出そうにないので、帝王切開も考えてます。との電話で起こされる。 30分で行きます、とのこと。 ぐずぐずしていられないので、研修に来ている先生と、第二当番の獣医師を呼ぶ。 0:35 来た馬のお尻を観ると、たしかにひどく左右不対称。 これは即帝王切開した方が良さそうだ。 全身麻酔して、手術台に乗せ、毛を刈って、消毒して、etc....
View Article疝痛の夜
夕方、家に戻ったら疝痛馬が来る、と呼び戻された。 5時からの疝痛で、来院が6時過ぎ。 さほど痛くない、血液所見は悪くない(PCV38%、乳酸値0.9mmol/l)、 超音波で・・・・結腸壁がはっきり見える、少し厚いかも、しかし蠕動している。結腸動脈は見えない。 直腸検査で・・・・結腸壁が厚い?ふんばるので無理できない。 - 入院厩舎へ入れて様子を観ることにした。...
View Articleメッツェンバウム剪刀
外科手術に使う剪み(鋏み)にもいろいろある。 ”直”とか”反”とか、 ”鋭”とか”鈍”とか。”片鈍”とかもある。 クーパーとか、メーヨーとか、人や病院の名前が付いている剪みに到っては、知らない、とか、持っていない、とかの大動物獣医師や大動物診療所も多いのではないだろうか。 - 牛の診療所だと、第四胃変位の手術がほとんどで、ときどき帝王切開。...
View Article術創のhair remove は除毛であって剃毛ではない
このブログで、何度もカミソリで毛を剃るのを辞めて、バリカンで毛を刈った方が良い、と書いてきた。 しかし、外科学の教科書的な本に明確な記述は多くない。 Equine Acute Abdomen の最新版にははっきりと書かれている。 - 毛を刈ることは剃毛よりも好ましい。 剃毛はより多くの皮膚のダメージを引き起こすからである(Fig41.3)。...
View Article古い写真
キャビネットの中にしまってあった古いX線フィルムを捨てた。 今は、X線画像はデジタル化されてサーヴァーに保存されている。 日付、牧場名、馬名、部位などで検索もできる。 しかし、それ以前はX線フィルムで保管しておくしかなかった。 何もか置いてあったのではなく、興味ある症例や、珍しい症例や、難しい手術症例などをしまってあった。 -...
View Article重度のGPM
初産した繁殖雌馬が鼻血を出して、けっこうな量が出た、とのことで来院。 分娩直後だったということで寝たり起きたりしているうちに鼻でもぶつけた、あるいは血圧上昇で・・・・ などと考えたが・・・ 内視鏡を鼻から入れて喉嚢入り口のフラップを見ると、右のフラップから血が流れ出ている。 まず左喉嚢へ内視鏡を入れると 中隔上に大きな病巣があった。 いかにもカビ、という粉を吹いた瘡蓋(かさぶた)だ。...
View Article分娩後48時間の不調は膀胱破裂だった
分娩して48時間の馬が親子で来院。 その朝から沈鬱で、T39.5℃。 腹水が増えてきているようだ、とのこと。 全身の白血球は減ってない。 超音波で観ると腹水がやや増量している。 穿刺したら、赤い、しかし比重は低そうな腹水が採れてきた。 腹水の白血球は4万。 腹膜炎は間違いない、しかしひどくない。 「便は出てる?おしっこは出てる?」と訊くと「便もしたし、尿も出ている」とのこと。...
View Article子宮出血へのトラネキサム酸の投与
先日の膀胱破裂の症例は、当初子宮穿孔が疑われていた。 子宮穿孔創を直接探るための膣から手を入れての内診で、まだ大きい子宮を手繰り寄せるようにして子宮角まで触ろうとして、おそらく子宮内膜が切れたのだろう、開腹手術中に膣からの出血が続いた。 なかなか止まらないので、開腹手術中にトラネキサム酸を投与してもらい、オキシトシンを点滴してもらった。...
View Article眼窩下孔でのブロック、そして橈骨骨折の応急処置 知っていてできる、と知らないからやらない、の差
朝、難産。枠場で出たそうだ。 午前中、1歳馬の第一趾骨底突起の骨折の関節鏡手術。 珍しいことに骨片は母床に骨癒合していた。 それを骨起子で割って摘出した。 骨癒合していると言っても、私たちの手の力で割れるようだと、500kgが高速で走るときにかかる力に耐えられない。 調教・競走するようになって割れれば、腫れて痛みが出て、休むか手術しなければならなくなる。 午後、2歳馬の去勢。...
View Article午後の結腸捻転、朝の結腸捻転 DEEP PURPLE
昼から、繁殖雌馬のひどい疝痛が来ると言う。 先の1歳の臍ヘルニアの手術が終わって覚醒室で寝ている間に来たが、トラックの中で立てない。 たいていトラックの前方を頭にして寝てしまうので、ひっぱって頭を後ろ向きにしてやると立つ。 馬だって馬運車の中で倒れていたくないのかも知れない。 ー PCVと乳酸値が高いのだけ確認してすぐ開腹。 結腸捻転で、捻れ方がひどい。...
View Article疝痛を開腹手術する判断 refer する判断
年間100頭以上の馬の腸管手術をする馬病院は世界的にも多くない。 うちよりはるかに多くの腸管手術をしてきたHagyard-Davidoson-McGeeのSpirito先生に尋ねたことがある。 ”疝痛は開腹手術の判断が難しいでしょ?” ”牧場でフルニキシン投与する。痛かったらHagyardへ連れて来られる。来院してまたフルニキシン投与する。...
View Articleある結腸捻転
前夜にも疝痛で、朝5時からひどくなった、という繁殖雌馬の疝痛。 術前PCV54%。 8時には開腹手術を始めたが、結腸の損傷がひどくあきらめざるを得なかった。 一度大結腸は創外へ引き出したが、また戻してある。 上が頭側cranial、腹側に腹側結腸、その頭側に背側結腸があるので、一見正常な位置関係に見える。 しかし、盲腸が頭側、胃のそばにある。 盲腸と腹側結腸を結んでいるのは盲腸結腸ヒダ。...
View Articleたいへんな、そして長い日曜日
朝、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。 午後は、繁殖雌馬の歯の治療の予定が入っているだけだった。 まあ、繁殖シーズンだ。 そう穏やかに済むとは思っていなかった。 子宮穿孔疑いの繁殖雌馬の依頼。 ー さらに新生子馬の鼠径ヘルニアの連絡。 疝痛症状があるという。 それじゃあ連れてきてもらうしかない。そして、子宮穿孔・腹膜炎は午後にずらしてもらう。...
View Articleminimally invasive removal のコツは手探り
中足骨を亀裂骨折していた子馬。 ブロードLCPをminimally invasive で入れて固定した。 1ヶ月ほど前に、中央部のscrewは立位で抜去している。 今日はLocking screw とLCPを抜くのでさすがに全身麻酔。 プレートを抜くのも簡単ではない。 しかし、たいていminimally invasive に抜ける。...
View Article眼瞼裂の縫合のコツは端っこから縫うこと
馬は瞼をどこかにひっかけて切ってしまうことがある。 たいていは上まぶた。 鎮静し、眼窩上孔でブロックすれば立位で縫える。 この日は、耳介神経ブロックと浸潤麻酔も併用した。 まず眼瞼のまつげが生えている側を縫って留める。 そうしないで、V字の底から縫ってくると、だいじな眼瞼縁がずれてしまいがちだから。 眼瞼結膜へ糸を出してはいけない。 角膜が擦れて傷ついてしまう。...
View Article牛の小腸捻転:35症例(1967-1992)
去年、北海道獣医師会雑誌に子牛の小腸閉塞の開腹手術4例を症例報告した。 その半年前に牛の小腸閉塞の成書や文献を読んでいて、ブログ記事も書いたのだけど、他の診療にかまけてアップしていなかったようだ。 「下書き」の中に残っていたので、アップしておく。 臨床家ってこんなもんだ;笑 別な症例が来ると、その前にやっていたことは放り出して忘れてしまう。 ---...
View Article結腸捻転の整復の仕方
朝、出勤したら疝痛馬が来ていた。 早くに分娩した馬で、もう大きな子馬と一緒に。 しかし、PCV76%だという。 口粘膜はチアノーゼ、そして斑状。 馬は痛がってはいないが震えている。 胃破裂? 超音波検査で腹水があるがひどく多いわけではない。 腹腔穿刺しようかと思ったが、それより直腸検査を先に。 骨盤腔で膨満した大結腸(大きさと太い腸紐があるのでわかる)に触り、つまむとひどく肥厚している。...
View Article新生子馬の後肢の屈腱拘縮
もう生まれて1ヶ月近くなる子馬。 両後肢の球節がかたくて、特に左後はナックルしてしまう。 何度かキャストしてはずしてを繰り返してきた、とのこと。 擦過傷もできてしまった。 もうキャスト固定による矯正は無理なので、腱を切って繁殖供用をめざしたい、とのこと。 フリーリターン(種付け料の返還制度)も使えるが、可哀そうだから生かしてやりたい、とのこと。 もっともなことだ。...
View Article肋骨骨折からの敗血症
その子馬は、生後数日で後肢球節の細菌性関節炎を起こし、関節洗浄しに連れて来られた。 そのとき、左の肋部が腫れていて、超音波で肋骨4本の骨折と周囲の血腫を確認していた。 知らないうちに2週間早く生まれていた子馬で、難産や人の牽引で折れたのではないと思われた。 親はちょっとうるさい馬のようだった。...
View Article子馬の結腸捻転
朝、出勤したら当番チームが子馬を開腹するところだった。 1ヶ月齢。 朝、厩舎へ行ったらもう疝痛で顔を擦りむいているのを発見した、とのこと。 開腹したら結腸捻転だった。 子馬の結腸捻転は珍しいが、たまにある。 幸い、結腸の虚血性損傷はひどくなく、膠様浸潤がわずかにあるだけだった。 - 当番チームは、 夜中に網嚢孔ヘルニアの開腹手術があり、 ほかの急患もあり、...
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