分娩して48時間の馬が親子で来院。
その朝から沈鬱で、T39.5℃。
腹水が増えてきているようだ、とのこと。
全身の白血球は減ってない。
超音波で観ると腹水がやや増量している。
穿刺したら、赤い、しかし比重は低そうな腹水が採れてきた。
腹水の白血球は4万。
腹膜炎は間違いない、しかしひどくない。
「便は出てる?おしっこは出てる?」と訊くと「便もしたし、尿も出ている」とのこと。
開腹手術することにした。
-
子宮は穿孔してない。
小結腸も閉塞も虚血性の損傷もない。
小腸閉塞も腸間膜の損傷もない。
膀胱?
触ってみるがわからない。
内視鏡を入れたら、膀胱尖に孔があった。
腹腔に入れた手で、膀胱の破裂孔から出てきた内視鏡を触れた。
膀胱破裂か・・・・・
-
開腹手術創を切り広げても、膀胱は縫えそうにない。
麻酔覚醒起立してから、立位で膣底を切開し、膀胱を膣内へ逸脱させて縫合することにした。
手術はYoshi先生にやってもらった。
膣壁は粘りのある丈夫な組織で切開しにくい。
アリス鉗子で保持しておいて縫合し終わったところ。
膣底の縫合は、吸収糸を大きめの三稜針に付けて連続縫合。
-
私はかつて、尿道括約筋を切開して、膀胱を膣内へ反転させることで繁殖雌馬の膀胱破裂を修復できることをVet Surgery誌に報告した。
分娩にかかわる膀胱破裂が5000頭に1頭の割合で起こることも報告した。
膣底切開して膀胱破裂を修復する方法は、ケンタッキーのHagyardのRodgerson先生が報告した。
ただ、症例数は多くなく、どの部位の破裂でも縫合できるか懸念があった。
私たちは、膀胱頚部近く、腹側の破裂でも膣底を切開する方法で修復できることをEquine Veterinary Education誌に症例報告として書いた。
-
終わって10時過ぎ。
かつては助けられなかった事故が起きたこの馬も助かるだろう。
馬の臨床獣医学も着実に進歩しつつあり、われわれもその中で学び、ともに前進でき、いくらかはその進歩に貢献できる。
馬の臨床をやってて楽しい、やって来て良かったな、と思った。
夜中だけど。
-
翌朝、この13歳の繁殖雌馬は少し食欲も出て、元気を取り戻しつつあるようだった。
腹腔ドレインを使って腹腔洗浄した。
もう退院しても大丈夫だろう。
/////////////
skiに行ったら、なんとスキーブーツが壊れた。
こんな壊れ方をするとは思わなかった。
このあと、崩壊し、インナーブーツで歩くはめになった。
29年使っていたから壊れても文句はないのだけど;笑
形ある物はすべて壊れる。
勝者必衰のことわりにも似て。