先日の膀胱破裂の症例は、当初子宮穿孔が疑われていた。
子宮穿孔創を直接探るための膣から手を入れての内診で、まだ大きい子宮を手繰り寄せるようにして子宮角まで触ろうとして、おそらく子宮内膜が切れたのだろう、開腹手術中に膣からの出血が続いた。
なかなか止まらないので、開腹手術中にトラネキサム酸を投与してもらい、オキシトシンを点滴してもらった。
トラネキサム酸は、止血するフィブリンを融解するプラスミンがプラスミノーゲンから変化するのを妨げることで止血効果を示す。
だから、私は手術や血管破綻による出血を抑える効果を疑ってきたけれど、2000年代になってヒト臨床での大規模研究で実際の症例での効果が示されてきている。
具体的な使い方の注意、そして「効かない止血剤」として使われてきた理由が、この講演ではざっくばらんに語られている(p5からの松田先生の講演)。
先の研究の紹介と同じ慈恵ICUの勉強会だが、こちらの方が詳しい。
その中にあるが、手術時の出血を抑える、輸血必要量を減らしたようだ、と言っても差は大きくないので、観ていてわかるほど出血が減るとは思えない。
産後出血に対する効果もヒトでは示されている。
ただし、分娩時の子宮出血量の抑制のために、分娩後にトラネキサム酸とオキシトシンを予防的に投与する、という研究では否定的な結果が出ている調査もある。
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分娩後24時間の16歳繁殖雌馬が疝痛で来院。
心拍は40ほどだが、呼吸数が80。
来院したら、口粘膜が白っぽい。
超音波検査している間も枠場でガタガタと肢を踏み変えたり、挙げたりしようとする。
もともと気性が荒く、人を襲う危ない馬なのだそうだ。
PCV49%、乳酸値12mmol/l。
どうやら腸閉塞ではなく、子宮動脈破裂のようだ。
子宮広間膜で動脈性の出血が起きているが、まだ血腫は破れていない。
鎮痛剤として、ブトルファノールを投与し、まだ痛いのでフルニキシンを再投与した。
ゆっくり点滴を始め、トラネキサム酸を混ぜた。
子宮血流量の減少を期待してオキシトシンも入れた。ただし、様子を観ながら、10単位ずつ。
なんとなく落ち着いた。
子馬を牧場においてきていて、そのために興奮してもいる。
「今晩が山です」と言って、そおっと牧場へ帰ってもらうことにした。
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しかし、この母馬はその後2時間くらいで死んでしまった。
翌日剖検したが、子宮体に血腫があり、内膜下から内腔にも出血しており、腹腔内へも出血していた。
結局、破綻した動脈は閉じなかったのだろう。
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今日は、1歳馬の飛節軟腫の関節鏡手術。
1歳馬のひどい外傷のキャスト除去。
子宮動脈破裂と、小結腸切断した難産の繁殖雌馬の剖検。
関節鏡手術のあとの細菌性関節炎?の関節穿刺。
3年続けて奇形を産んだ繁殖雌馬の子宮内視鏡検査。
新生子馬の疝痛。
研修の獣医さんと、見学の獣医さん、ひとりずつ。