夜、10時に呼ばれる。
繁殖雌馬の疝痛。
血液は悪くないが、超音波検査で肥厚した小腸が見えた、とのこと。
開けて、盲腸背側紐から回腸に触れたら、2重以上に巻かれているのを感じる。
簡単にはほどけない。
絞めている側のループを緩めておいて、絞められている側のループを抜く。
2重以上に絡んでいるので、絞められている側が別のループを絞めている。
絞めていてゆるまない物が腸管や血管でなければ切ってもいい。
どうせ切除しなければいけない腸管に付属している腸間膜だ。あとで切断することになる。
それでほどけた。
空腸下部の腸間膜に辺縁が瘢痕化した孔と、瘢痕収縮があった。
おそらくいつかの分娩で孔が開き、そこへ小腸が入り込んだことで空腸と回腸の纏絡を起こしたのだ。
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この馬に麻酔をかけたとき、電話があって、別な繁殖雌馬の疝痛の依頼。
ひどいので連れて来て待つことになっている。
のんびり手術していられない。
しかし、切除、吻合、腸間膜の閉鎖、閉腹、と時間がかかる。
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ほどけた空腸下部を術創から離れたところに垂らして、切開して小腸内容を捨てる。
腸間膜の血管を結紮する。
回腸を切断して盲端にする。
空腸下部を切断して盲腸に吻合する。
腸間膜を縫って閉じる。
吻合部の通過に問題がなく、漏れが無いことを確認する。
開腹手術創を閉じる。
終わって、12時過ぎ。
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待っていた繁殖雌馬は、疝痛を見つけて4時間あまり。
腹囲膨満がひどい。
手術は北米馬外科専門医Yoshi先生と地元の担当の先生でやってもらう。
私は、先の開腹手術馬の覚醒を観ながら、手術の外回りの助手をして、術後の輸液を用意して、etc.
手術が続くと、診療室も汚れるので掃除もあるし、術衣やドレープやタオルの洗濯も増える。
器具の洗浄や滅菌もしておかないと、次々と手術をこなせない。
血液検査カルテや診療カルテも書いておかないとならない。
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この2頭目の疝痛馬は、結腸捻転で、小腸まで大きなループで絡んでいて大手術になった。
膨満した小腸を切開して内容を捨てて、なんとか小腸の捻転もほどけた。
終わって、4時。
もう朝だ。
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夜明けだし、いつも起きる時間なので寝付けなかった。
入院馬を観に行くと、2頭とも快適そうではない。uncomfortable
この日は外傷から細菌性関節炎を起こして、骨髄炎にもなって長期治療している1歳馬の関節鏡手術が朝一の予定。
しかし、繁殖雌馬の疝痛の依頼。
遠方なので1時間以上かかる。関節鏡手術が終わる頃に連れて来てもらうことにする。
関節鏡手術を終えて、来院した馬は血液検査でPCVと乳酸値が上昇していて、超音波で結腸壁の肥厚が確認された。
すぐ、開腹。結腸捻転。
入院厩舎に術後の点滴を用意する。輸液パックに輸液剤を20リットル詰めて吊るす。
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1歳馬の大怪我の依頼。
またまた別な繁殖雌馬の疝痛の依頼。
13日の金曜日。他に予定していた診療は全部延期してもらう。
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1歳馬は手術室で吸入麻酔して外傷治療するつもりでいた。
しかし、傷を観たら、皮膚は壊死・脱落が必至の状態で、球節と屈腱鞘も開いてしまっている。
Ownerはあきらめる決断をした。
ゆうべから4頭目の疝痛馬は来院したらもう立っていられない。
PCVが55%なのだけ確認して開腹手術。
今度は私が執刀する。
結腸を引っ張り出して、切開して内容を抜いて、押し戻して捻転を完全に整復して、結腸固定colopexy して。
終わって、カルテを書いて、洗濯物を干して、掃除して、器具を洗って、入院厩舎に輸液を吊るす。
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昨夜の開腹手術馬は、1頭は回復傾向、1頭は術後イレウスPOIに近い。
どの馬が使うかわからないけど、入院馬用の輸液パックを用意しておく。
この季節、馬は1日20リットル以上の水を飲む。
絶食絶水させるならその水は輸液してやらなければならない。維持
もちろん、脱水で失われている分の補正のために輸液しているのだし、
手術で失われる血液、腸内容、術後の腸管や腹腔への水分移動の補充のためでもある。補正
術後の輸液には蠕動促進剤メトクロプラミドを入れていることもある。
術後イレウスになったらリドカイン持続点滴もする。投薬
ゆうべから何回輸液パックを用意したろう?