完全に折れてしまった肢を治そうというのは、いまだに馬外科医にとってもとてもチャレンジングな治療になる。
いくつも考えなければならないことがある。
・斜骨折か、横骨折か、骨端板離開か、それとも3ピースか
一見、横骨折が簡単そうに思える。私もかつてそう誤解していた。
横骨折は整復が比較的容易だが、プレートの1箇所に負荷がかかりやすいのでプレートが破損しやすい。
3ピース骨折やそれ以上の粉砕骨折は内固定は厳しくなる。
骨折部位が骨端に近いほど強固な固定は難しくなる。
・馬の体重
300kgを超える馬では内固定に使う器材の強度が不足しがちなことが報告されている。
しかし、LCPや5.5mmscrewが使えるようになったこともあり、成馬の橈骨骨折も治療が試みられている。
ただし、体重が重い馬では巨大なエネルギーにより爆発するように骨折していることが多く、単純な斜骨折や横骨折は少なく、ほとんどが粉砕骨折している。
子馬では治癒の可能性が高まっている。
子馬が骨折したら応急処置をして外科病院へ運ぶべきだ。
何でもイイから長い添え木を当ててガムテープで巻くだけでも良い。
・治療費、予後、競走馬になるか
治療費は高くなる。優れた器材が使えるようになっているが、LCPは3万ほど、LHSは5千円近くする。
LCPを2枚使って、ずらりとLHSを入れればそれだけで10万を超える。
麻酔時間は腸管手術より長くなる。
術後治療も長期間必要で、プレートを2枚使うとプレートを抜く手術が2回必要になる。
それでいて確実に治る保証はない。
治ったとしても競走馬にするには成長の遅れ、対側肢の二次的問題、骨折部での神経損傷、骨癒合の完璧さ、など課題が多い。
「競走馬もあきらめたものではない」と言うには外科医の成功体験が必要だ。
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それでも治せるものなら治したい。治してやりたい。治してほしい。というのがないと、そのまま安楽殺だ。
目の前に生きる死ぬの馬がいるときこそ馬医者の存在が問われるのだと私は思っている。
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橈骨骨折の技術的側面のマニアックな部分について書こうと思ったのだけれど、すっかり話がそれてしまったので・・・・つづく。
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今日は、競走馬の球節の関節鏡手術。
午後は、当歳馬の腹壁ヘルニア。
腹壁ヘルニアはとても成績が悪い。
きれいに腹壁が切れていることはまずなくて、複雑な形で坐滅されているからだ。
その手術の最中に、繁殖雌馬の疝痛の依頼。
来院して即開腹。
結腸捻転だった。
その手術の最中に、繁殖雌馬の疝痛の依頼。
結腸捻転だった。
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手術が終わって2時間経っても立てなかった。
グルコン酸カルシウムを点滴し始めたら飛び上がるように立ち上がった。
分娩後2ヶ月のお母さん馬。
寝ているうちに乳房が張って、乳が漏れてきていた。
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