産業動物獣医学会・北海道で、かつて牛海綿状脳症をシンポジウムでとりあげましょう、ということになった。
私は、やるならマスコミの代表を呼んで、どうしてあのような報道になったのか、あのような報道しかできなかったのか、話しててもらいたい、と言った。
が、学会長の「そこまでやりますか」との言葉でマスコミの立場の話を聴くことはなくなった。
別に新聞社に喧嘩を売ったり、新聞記者を吊るし上げたいわけではないが、新興感染症が世に現れたとき、マスコミがどういう報道をして、どういう役割を演じるのか、それはなぜなのか、認識しておくことはとてもたいせつなことだ。
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連日の「狂牛病」騒動の中で、マスコミは発生牧場にも押しかけ、関係者は記者会見し、大騒動になった。
政治家の無知なコメントが糾弾されたりもした。
振り返ってみると、ほとんどのことに意味は無く、騒ぎを大きくしただけだった。
専門家であるはずのプリオン病研究者たちは、わかっていないことの枝葉末節にこだわって統一見解や予測は示さなかった。
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口蹄疫が発生したときも、この豚と牛の病気がTVニュースやワイドショーで大きく取り上げられていた。
タレント知事が連日会見に引っ張り出され、その一言一句が検証され、叩かれた。
非常に伝染力が高い偶蹄類の伝染病で、獣医伝染病学でも重要な疾病として教えられる。
しかし、海外悪性伝染病として扱われているので、獣医師でもさほど知識はない。
政治家や地方自治体の首長であっても、普段から家畜の伝染病について勉強したりはしないだろう。
防疫態勢や措置に責任はあっても、それは県や国の専門家の意見を聞くしかない。
それをどう具体化するかの最終責任だけが首長の役割ではないか。
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意見を聞くべき人の意見を中心に報道し、「こうなるでしょう」「こうしましょう」という報道がどうしてなされないのか不思議でしょうが無かった。
結局、不安を煽り、誰かを叩き、騒ぎを大きくした方が、TVの視聴率は上がり、新聞は読まれる。
江戸時代のかわら版と変わらない原理をマスコミは今も抱えている。
どうすべきか、という建設的な意見は、日本のマスコミは特に好まない。
かつて軍国主義に賛同したという反省もあり、あとで批判されることは避けて、批判できることだけを探すのだろう。
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TVのニュースでは、最近は気象情報の中で、「ただちに避難してください」「命を守る行動をしてください」と積極的に行動をうながす呼びかけが行われる。
いくつもの災害を経験して、マスコミも少し立ち位置を変えたのかもしれない。
今、世界をcovid19が大騒ぎさせている。
私たちはそのほとんどをマスコミを通じて知るしかないのだけれど、マスコミが本来抱えているその”性質”については考えておいた方が良いだろう。
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オラの情報源は鼻です
さんぽで匂いを嗅ぐと きのう何があったのか 全部わかります