子牛が臍から感染し、臍帯炎、尿膜管膿瘍、臍静脈膿瘍、ができる症例は増えているように思う。
本当に増えているのか?
かつては見過ごされ、予後不良になっていた症例が多かった可能性もある。
帯広畜産大学からの巨大な腹腔内膿瘍の予後不良例の報告。
この報告では、原因菌は環境細菌だった、とされているが、かつてはArcanobacterium pyogenes とされており、
現在ではTrueperella pyogenes とされている細菌の病原性は無視できないように思う。
超音波画像診断装置の普及によって臍静脈と臍動脈、および尿膜管といった腹腔内の構造の状況まで把握できるようになった。
それで、診断される症例が増えたということはあるかもしれない。
子牛の臍のトラブルでは超音波画像診断は必須の手技であろう。
手術が必要となった症例では、各地で開腹手術が行われている。
島根での手術例。キシラジンと局所麻酔で。
傍正中切開がいいんじゃないか、という兵庫からの報告。7頭のうち2頭は淘汰、1頭はこの時点で育成中。
予防して、発生を減らしたいところだ。
農家向けに多くの文章が書かれている。
臍のトラブルについて、根室から。
臍ヘルニアと外見上区別がつきにくいので、獣医師に診せる判断をどうするかは重要なポイントだ。
多くは出生後の臍帯の消毒を推奨しているのだが、抗生物質軟膏の臍帯への注入と、抗生物質の全身投与を推奨している文章もある。
これは賛否両論あるだろう。
抗生物質を予防に使えば、初期の徴候が隠蔽され、耐性菌が環境に増え、難治性になるかもしれない。
分娩房を使っている農家では、分娩房の掃除と消毒は非常に大切だろうと思う。
分娩房がTrueperella pyogenes で汚染されていたら、感染実験・発症実験をしているようなものだ。
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分娩の管理が子牛の臍のトラブルの要因になっている可能性を示唆する文章もある(最初の岩手からの記述)。
本当に増加しているとしたら、血統的な背景も考えられるかもしれない。
しかし、ホルスタインでも黒毛和種でも似た状況なので、他の要因が大きいのだろう。
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その地域から分離されるTrueperella pyogenes について詳細に調査した報告もある。
福井から。
とても素晴らしい調査成績だ。
Trueperella pyogenesの病原性について推察することもできるし、
環境が汚染されて発症につながるのではないかと考察することもできるように思う。
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研修センター裏の林の紅葉。
剪定しなきゃな・・・・