カシワは馬には毒 2
馬のどんぐり中毒の報告をもうひとつ書き留めておく。 古い報告(1983)で、急性中毒の1例報告。 - Fatal acorn poisoning in a horse: pathologic findings and diagnostic considerations 1頭の馬の致死性どんぐり中毒: 病理所見と診断的考察 J. Am. Vet. Med. Ass....
View Article巨大な尿膜管膿瘍
連れて来られたのは3.5ヶ月齢のホルスタイン子牛。 生まれたときから臍の調子が悪く、最近はだんだん腫れが大きくなって、抗生物質を投与しているが抑えられない。 超音波で観たら、臍の中には膿が溜まっていて、腹腔内尾側へ続いている。 破らずに引き出さなければならない。 しかし、巨大で、周囲に炎症が波及し浮腫があり、腹腔内では大網と癒着していて、危険で難しい。...
View Article子牛の臍構造の感染 尿膜管膿瘍、臍静脈膿瘍、臍帯炎 各方面の記述から
子牛が臍から感染し、臍帯炎、尿膜管膿瘍、臍静脈膿瘍、ができる症例は増えているように思う。 岩手での報告。 本当に増えているのか? かつては見過ごされ、予後不良になっていた症例が多かった可能性もある。 帯広畜産大学からの巨大な腹腔内膿瘍の予後不良例の報告。 この報告では、原因菌は環境細菌だった、とされているが、かつてはArcanobacterium pyogenes とされており、...
View Article外傷 2例
2歳馬、珍しいところを怪我した。 半腱様筋の上を、縦に40cmほど何かで刺したらしい。 トロッカーカテーテルを入れておいて、下の部分を切皮して開創した。 管を入れて洗浄しているところ。 このあと長いペンローズドレインを通して留置した。 - 何か刺したんだ。 何が刺さったのか見つけておきたいところだ。再発防止のために。 ---...
View Article飛節OCDの関節鏡手術 IMR;inter medial ridge
サラブレッド生産地の馬病院なので、関節鏡手術では1歳馬の飛節OCDが最も多い。 部位では脛骨遠位の中間稜の背側。distal intermedial ridge of tibia この1歳馬の骨軟骨片は1cmほど。小さい。 外側から針を刺入し、病変部へのアクセスを確かめておいて、外側切開部の目安にする。 この馬、距骨の中間溝に軟骨が欠損した部位がある。...
View Article漂流
江戸時代の人を思うとき、私たちはどこかで甘く、軽く、見ていないか? 船乗りにしても、航海術も未発達で、造船技術も低く、ろくな教育も受けていなかったのだから、と考えてしまわないか。 漂流(新潮文庫) 吉村昭 新潮社 江戸時代に船の遭難で無人島に流されてしまった男、長平のサバイバル。 沢も湧き水もなく、飲み水は雨水を蓄えるしかない。 しかし、桶や樽もない。 どうしたか?...
View Article備忘録 弁膜症と側頭骨舌骨関節症
書き留めておかないと診たことさえ忘れてしまうので・・・ 発熱、わずかな軟便、元気不振、で1ヶ月ほど治療と経過観察されていた当歳馬。 元気を取り戻しても心拍が100近くある、とのことで来院。 右で心内雑音というよりは駆出音のように私には聴こえたが、心拍が速いので1音と重なって聴こえたのかもしれない。 右房室弁。 塊が付着している、というより弁の肥厚がひどい。...
View Articleクラブフット 忙しい秋の日曜日
朝、前日の朝も疝痛で来た繁殖雌馬が再来院。 前日も結腸変位を疑ったのだが、疝痛がないので経過を観ることにした。 再来院したら、また疝痛を見せない。 「・・・・・もう開腹しますか・・・・開腹せずに治まる可能性もあるけど・・・」 今度は電解質液を飲ませて経過を観ることにした。 - その急患で、予定していた側頭骨舌骨関節症の手術は延期。 -...
View Articlestruggle with referee, or straggle 馬医者の幸せな時、そしてレフリー(scrutineer) との闘い
疝痛を見つけてから35時間ほど経って開腹手術をすることになった結腸変位の繁殖雌馬。 手術の翌朝、絶食のための口カゴを外して、口元へ青草を持っていくと食べる。 もう50時間ほど絶食しているので、腹も減っているだろう。 術前のPCVは48%とひどく高いわけではなかったが、経過時間が長かったし、 手術時には赤褐色の濃縮尿をしていて、手術中は排尿がなかった。...
View Article敷き料による回腸閉塞
前夜も疝痛だったが、落ち着いた、という1歳馬が翌朝はかなり痛く、来院。 超音波で小腸の完全膨満を確認。 留置された胃チューブからは胃液が出続けている。 開腹したら小腸閉塞で、回腸に硬いものが詰まっているのに触れた。 ヘイキューブ? ビートの塊? 自分の便? 土のついた草の根? いずれも触感が違うので、牧場の人に訊いたら「リナボックス」という敷料だろう、とのこと。 腹が減ると馬は食べてしまうらしい。...
View Article乗馬の側頭骨舌骨関節症、と停留精巣
本州から側頭骨舌骨関節症の治療のために送られてきた17歳の乗馬サラブレッド。 平衡感覚障害は軽度 右の耳の麻痺も軽度 右眼瞼の麻痺は中程度 乾燥性角膜炎中程度 右顔面麻痺は重度。口は開いていて、下唇も麻痺。 舌の麻痺は軽度。 サク癖はひどい。たぶんTHOの要因になった。 - 右の角舌骨を摘出した。...
View Article子牛の感染症対策、牛伝染性リンパ腫対策のセミナー
症例報告を再投稿する期限が迫ってきているので、朝5時から修正稿に取り組んだ。 なんとか、再投稿することができた。 ー 今週は検査当番なので、細菌検査もやっておく。 2件、スマホで撮影し、培地の状態と、それだから有意な菌だと思えない、というショートメールを担当獣医師に送った。 有意な菌だと思わなくても、いくつかコロニーが発育したら”±”と報告する。...
View Article5ヶ月齢の尺骨骨折のDCP固定
5ヶ月齢の当歳馬が、収牧時に他の親馬に蹴られたらしい。 跛行は負重できないほどで、肘周囲も腫れてきた。 それで翌々日、X線撮影したら、尺骨骨折していた。 と画像が送られてきた。 尺骨頭部が変位していたし、もう200kg以上あるので内固定が必要だと判断した。 - 私は尺骨骨折の手術も仰臥でやるのを好む。 世界的には患肢を上にした横臥でやる馬外科医が多い。...
View Article気分上々
気分上々 (角川文庫) 森 絵都 KADOKAWA/角川書店 図書館で借りたのは、文庫ではなく。 相変わらず、うまいな~と感心させられる短編集。 「ウェルカムの小部屋」は、まあご挨拶。 「彼女の彼の特別な日」「彼の彼女の特別な日」はごく短いラブコメ風。...
View Articleホルスタイン新生子牛の屈腱拘縮
前日に生まれたホルスタイン子牛が突球で、副木を当てたが伸びないということで来院。 かなりひどい。 右前は引張ると伸びるが、これでは蹄底で負重できない。 左前はより重度で、球節で内反もしていて、関節の拘縮もあるようだ。 立てないまま運ばれてきて、そのままキシラジンで鎮静して、局所麻酔して、浅屈腱を切断し、それだけでは伸びないので深屈腱も切断した。 蹄にsuper fast...
View ArticlePRPの作成 血小板リッチ血漿
血小板には組織の修復を促すサイトカインや成長因子が豊富に含まれていて、治癒のために大きな働きをしている。 血小板数を普通の血液(末梢血)より増やした血漿を局所投与してやると、組織の修復や再生が促進される。 PRP(Platelet Rich Plasma)療法と呼ばれている。 私がいる家畜高度医療センターでも、浅屈腱炎、骨嚢胞、皮膚欠損、などの症例で行っている。...
View Article炎症とは何か?馬医者にとって
「炎症」ってよく言われるけど、何? さあ、獣医さんたち説明できるだろうか。 獣医学教育の中で教わるのは、病理学?、内科学?、外科学? なんて習った? 国家試験のために復習した? ー 外科学で習ったのは、 redness and swelling with pain and heat. 発赤と腫脹、痛みと熱感を伴う。 これは炎症の症状・徴候を示している。...
View Article疝痛の超音波検査は過剰診断 overdiagnosis に注意
夜間放牧明けの繁殖雌馬。 疝痛で治まらない。 直腸検査で「捻れている」ような所見あり、ということで来院。 しかし、痛くない。 直腸検査したが、妊娠子宮しか触れない。 右肋部からの超音波検査で結腸動脈が見えた。 結腸動脈周囲も少し浮腫があるかも・・・・ そもそも体表から結腸動脈が見えるのがおかしい。 しかし、疝痛がないので入院厩舎で様子を観ることにし、1時間以上観察したが大丈夫なので帰って行った。...
View Article地元NOSAI若手獣医師の研修会
去年はやったんだっけ? コロナでできなかったんだっけ?? 馬診療の基本も実習したし、 蹄に焦点を当てた実習もした。 ー 今年は、要望を聞いておいて、 疝痛の診断、直腸検査、超音波診断、胃チューブ挿入、などを講義と実習した。 さらに骨折の応急処置として、ハーフリムキャストを実習した。 午後は、 跛行診断の講義。 跛行診断の実習。 神経ブロックの実習。 X線撮影の実習。...
View Article査読の技法
症例報告を投稿して、大幅な修正を要する、という結果が帰ってきたので、修正稿を作成して継続審査へ送った。 「査読」について考えることがあったので、現代の学術論文の査読がどのように行われているのか、どのように行うべきなのか、本を買って読んでみた。 科学を育む 査読の技法 水島昇 羊土社 著者は年間50程度の査読を行う細胞、生命科学分野の研究者。...
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