血小板には組織の修復を促すサイトカインや成長因子が豊富に含まれていて、治癒のために大きな働きをしている。
血小板数を普通の血液(末梢血)より増やした血漿を局所投与してやると、組織の修復や再生が促進される。
PRP(Platelet Rich Plasma)療法と呼ばれている。
私がいる家畜高度医療センターでも、浅屈腱炎、骨嚢胞、皮膚欠損、などの症例で行っている。
(ヒト医療のPRP療法に比べるとはるかに安い)
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高い機材は使えないので、手作業。
5mlシリンジのハブを切って、遠心機で回せるようにし、400gで7分間遠心する。
赤血球と白血球は沈むが、血小板は沈まない。
その血漿部分だけを別なシリンジに三方活栓を使って移す。
そのシリンジを、今度は2000gで7分間遠心する。
この回転数(遠心力)だと血小板も遠心されるので、上澄みを捨てて底に張り付いた細胞成分をボルテックスミキサーで巻き上げる。
血小板が本当に濃縮されたか確認しておきたい。
元の末梢血が27万9千/μlだったのが、操作後162万5千/μl。
いいできだ。
目的によるが、白血球が多いと炎症が強くなったり、組織にダメージを与える可能性がある。
WBCは13,670/μlだったのが、操作後1,890/μl。
しっかり除去されている。
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何にでも効くとは思わないが、効果があると思われる症例には使っていきたい。
馬や牛の臨床分野ではevidenceは乏しいが、しっかり評価しながら勧めていきたい。
再生療法は現代のVodou(ここでは民間信仰・呪術)だと言う批判もあることを胸におきながら。
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外傷で皮膚欠損し、傷が肉芽で覆われて、それ以上皮膚が寄ってこないことがある。
体としてはそれで治癒過程が終了なのだろう。
皮膚の辺縁にPRPを注射してやるとまた皮膚が寄り始める、ことがある。
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骨折すると出血がおきて血腫が形成される。
その中に含まれる血小板が放出する因子が骨癒合に重要な働きをすることが知られている。
日数が経って骨癒合が思わしくなかったらPRPを患部に注射してやると骨癒合がまた進むだろうと思う。
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この秋の記念撮影をもう一枚。
ことしモミジが黄色かったのは、こいつのちっこのおかげではありません。