「炎症」ってよく言われるけど、何?
さあ、獣医さんたち説明できるだろうか。
獣医学教育の中で教わるのは、病理学?、内科学?、外科学?
なんて習った?
国家試験のために復習した?
ー
外科学で習ったのは、
redness and swelling with pain and heat.
発赤と腫脹、痛みと熱感を伴う。
これは炎症の症状・徴候を示している。
だから炎症とは何が起きているか、ではなく、どうなるかだろう。
しかし、当たり前のことのようでありながら、しっかり覚えておくと役に立つ。
「塊ができてんだけど・・・」、あるいは「腫れてんだけど・・・」
と言われて、触ってみて、
熱感がある、または押さえると痛い、というなら腫瘍はほぼ否定できる。
熱感や痛みがある腫脹、は炎症だろうから。
ー
その炎症では何が起きているか?
古典的には、血管の拡張、血流量の増加、血管の透過性亢進、白血球ほか炎症細胞の遊走・集簇、ということになる。
私はよく戦闘、戦争に例えて考える。
敵が体内に入ってきたときに、輸送路を確保、拡張し、敵を攻撃する兵士(白血球)を戦闘地域(炎症創)へ運ぶのだ。
炎症創では闘争が起きている。
兵士たち(白血球)が闘いに勝てば、炎症を引き起こした病原体あるいは異物は取り去られ、兵士たちは去り、元の状態へ戻っていく。
しかし、激戦で死亡する兵士たちが多いとその死骸が溜まってしまう(膿)。
いつも兵士たちを臨戦態勢にしておけば良いようなものだが、それでは体に負担が大きいのだ。
エネルギーも使うし、体の平穏な活動を邪魔するし、自らの体を攻撃したりもしてしまう。
-
だから、炎症とは、まず第一に防衛反応(免疫反応)、修復反応なのだ。
やたらと解熱鎮痛消炎剤を使う獣医さんがいるが、
全身の発熱も、体温が高い方が免疫力も高まっていることが知られている。
体がわざわざ体温を上げているのに、それを下げちゃってどうする。
特に、最も強力な消炎効果を示す副腎皮質ホルモンを好む獣医師がいるが、
血腫やフレグモーネを膿瘍化させていたりする。
体が闘おうとしているのに、援軍を送るのをやめさせるからだ。
-
症状として認識されるのが炎症であることが多いので、
炎症をなんとかしなきゃ、となるのかもしれないが、
炎症とはそもそも体のまともな反応で、重要な働きをしている。
治癒へ向かおうとする生体の反応を邪魔して病態を悪化させるのは愚の骨頂だ。
/////////////
Image may be NSFW.
Clik here to view.
晩秋の朝。