分娩約2週間の繁殖雌馬が疝痛で来院。
分娩後、不調で何度か疝痛症状を見せているとのこと。
呼吸もおかしいので、横隔膜ヘルニアが疑われるとのこと。
来院すると、呼吸数が多く、可視粘膜はうっすらとチアノーゼ。
超音波検査では胸腔域が拡大していて、胸水・腹水があり、胸腔の中に腸管らしきものが見える。
腹囲は張っておらず、直腸検査でもかえって空虚な印象とのこと。
横隔膜ヘルニアだとほぼ確信して開腹手術。
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いつもより頭よりを腕が入るだけ開腹する。
手を入れて横隔膜方向を探ると、「あ~デッカイ穴が開いて、結腸が入り込んでいる・・・」
胸骨柄まで開腹する。
胸腔へ入り込んだ大結腸を抜こうとするが、胸腔に入った部分に大量の内容があり、引っ張り出せそうにない。
胸の中で骨盤曲らしきものをつかんで出そうとするが、全体は出ない。
しかたがないので、できるだけ出しておいて骨盤曲を切開して内容を捨てる。
骨盤曲を閉じたあと胸腔へ戻して、また根部から引っ張り出そうとするが・・・・出せない。
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大結腸に補液管を刺して、生理食塩水を注入し、内容を柔らかくしておいて、少しずつ腹腔側へ搔き出す。
そして、また骨盤曲側から引張って・・・・・
危うく破裂しそうだったが、なんとか引張り出せた。
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あとは横隔膜を非吸収糸で縫合閉鎖する。
Y字型に破裂していて縫いづらいがなんとか縫えた。
横隔膜の縫合部から胸腔にチューブを入れておいて吸引機で吸引して胸腔をできるだけ陰圧にする。
でないと、自分で胸を広げても肺が膨らまず、呼吸ができない。
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なんとも疲れる大手術になったが、私は結腸も閉じなかったし、横隔膜も縫わなかったし、開腹手術創も閉じなかった。
しかし、結腸内容を胸腔から搔き出すだけでたいへんな作業だった。
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私、こどものときこれで死に掛けました。
家族で風呂屋へ行くとき、家を出たとたんに舐めていたカンロ飴がのどにつまった。
息ができなくなったが、声も出せない。
・・・・・っ、・・・・っと、なんとかはずれて死なずに済んだ。
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横隔膜ヘルニアは「呼吸器病」に分類されている。
消化器疾患ではない。