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Channel: 馬医者残日録
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文献「子牛2頭での角度固定インターロッキングネイルを用いた脛骨骨折の修復」part5

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さて、子牛の脛骨骨折2症例をインターロッキングネイルで治療した報告のもう1例。

これもたしかに治療するのが難しい骨折だ。

螺旋骨折で、骨折部が長い。

大きく骨体が裂けているだけでなく、いくつも亀裂がある。

3ヶ月齢、89Kgのbeefalo という肉用種だそうだ。

乾草の塊の下敷きになった。

さて、著者らの内固定方法についての検討。

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ノンロッキングプレート(LC-DCPあるいはDCP)は当初適応だと思われた。

screwが引き抜かれるリスクは、構造的により強い骨により軽減されるから。

(3ヶ月齢なので、新生子牛より骨が強い、と言いたいのだろう)

さらに、皮質骨screwは両側の骨端板と関節から離れたところを狙うことができる。

しかし、3.5 あるいは4.5 mm プレート用に入手できるscrewの長さはbicortical(対側皮質へ届かせる)には短すぎる。

そこで、3.5 あるいは4.5 mm LCP であれば、LHSは入手できる長さで monocortical (手前の皮質にだけ効かせる)で良いので、考慮された。

しかしながら、症例1で書いたように、プレートの近位部は骨幹端の広がりに沿うように曲げなければならないので、screwは骨端板を貫く方向を向いてしまう。

このことは、医原性の非対称の骨端板閉鎖と、それによる患畜の肢軸異常を引き起こすリスクを増大させる。

 angle-stable interlocking nails の利点と、プレート固定の制限を考えた上で、インターロッキングネイルが理想的だと思われた。

さらに、サークレージワイヤーを用いた骨折固定が負荷抵抗を創り、このより体重がある子牛の大きな荷重からインターロッキングネイルを守る。

最終的に、症例1と同じように、インターロッキングネイルが他の骨折固定方法に比べて、財政的により経済的であった。

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LCPじゃなくて、DCPでも行けるかと思ったけど、対側皮質まで届くscrewが手に入らない。

それならLCPにLHSなら手前の皮質に効かせるだけでも良いかもしれないけど、LHSはLCPに垂直にしか挿入できないので、

骨端板(成長板)を貫いてしまう。それは、成長上の問題を引き起こす可能性がある。

というのが、著者らの手術方法選択上の主張。

確かに、難しい骨折ではあるのだが、同じタイプの骨折を私はDCPやLCPで治してきた。

螺旋骨折を完全に整復し、

lag screws を複数入れられるのでずれないように固定しておいて、

DCPでもLCPでも、ブロードが良いだろう。骨幹の長さに近いプレートで固定する。

骨幹部では手に入る長さのscrewで充分届くはず。

骨幹端では、対側皮質まで届かないかもしれないが、7cmほどの長いscrewになるので、必ずしもbicortical でなければダメということではないと思う。

そして、著者らがひたすら怖れている骨端板を貫くことは、大きな問題を引き起こすことはないことを私たちは知っている。

サラブレッドでもsingle screw 法で肢軸異常を治療するのだし、

サラブレッドでも子牛でも、成長板損傷だと成長板を跨ぐ内固定をするのだし、

それらの子馬や子牛のほとんどに大きな問題が残らないことを経験しているからだ。

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"Finally, the ILN was financially more economical compared with other osteosynthesis methods."

financially more economical という表現は私にはわからない。

インターロッキングネイルは、LCPにLHSをずらりと入れるよりさらに高価なんだろうな、と思うだけ;笑

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薪棚の薪の中で冬眠していたカメムシ。

去年の秋は大量発生したようだ。

薪と一緒に家の中へ運び込んでしまう。

虫が嫌いな人や綺麗好きは薪ストーヴには向きません。

 

 

 


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