競走馬の橈骨遠位端はchip fracture の好発部位で、関節鏡手術の対象になる。
予後は良好だが、関節の外にまで骨増勢することがよくある。
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この3歳競走馬、橈骨遠位を骨折してしまった。
chip fracture 小片骨折もだが、よく見ると骨折線が関節の外にまで伸びている。
盤状骨折と呼んでよいのかどうか知らない。
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まず関節鏡で関節内を観て、骨折した関節面を削った。
もし大きな骨折片がグラグラ動くようなら先にスクリュー固定をしようと思っていたがその必要はなさそうだった。
それから損傷部の内側、外側、そして骨折部に目印の針を刺す。
で、あまり関節腔に近すぎない位置で骨折部を圧迫できるようにlag screwを挿入した。
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手術する前に、ペンシルヴァニア大学教授のDr.Richardsonに相談していた。
「珍しい骨折だ。スクリュー固定しなくても良好に骨癒合するとは思うが、スクリュー固定した方が良いだろう。ただし、腱鞘を傷つけてまでスクリュー固定するのは良いことではない。」
とのコメントだった。
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馬主さんは、手術する価値があるかどうか迷っていたようだった。
しかし、勝つか2着にしかなったことがないとても強い馬だ。
経過良く競走復帰することを願う!
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橈骨遠位端にひどく骨増勢してしまう競走馬は、多かれ少なかれ、この馬の骨折に似た損傷を受けているのだろうと思う。