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Channel: 馬医者残日録
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成馬の白内障

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8歳の競走馬の白内障。

去年から右眼に白内障があったが、ここへ来て左眼も見えていないようだ、とのこと。

右眼。

左眼。

先天性ではない。

単なる加齢性でもない。

馬の白内障の原因はほかには、遺伝性、外傷性、栄養性、炎症誘起性、があるとされている。

両眼がこうなるというのは、外傷性とは考えにくい。

コンディションの良い現役競走馬なので栄養性でもないだろう。

馬回帰性ブドウ膜炎から白内障を起こすことが知られているが、この馬はブドウ膜炎の経過もないようだ。

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水晶体と呼ばれるレンズが壊れていくメカニズムは、水晶体の可溶性蛋白の減少、水晶体上皮細胞のナトリウムポンプの障害、水晶体内のグルタチオン減少、水晶体線維の腫脹、および線維膜の破裂、である。

右眼の水晶体はすっかり形状を失い、虹彩と癒着し、そのために散瞳しない。

水晶体が濁っているだけではないのだ。

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両眼ともほとんど見えていないので、視力を回復させるためには水晶体を取ってしまう手術をすることだ。

馬でも水晶体の超音波乳化吸引術が行われている。

しかし、いくつか難しい問題がある。

・水晶体だけでなく、網膜や角膜にも疾患がないか?

・眼瞼、角膜、結膜、ブドウ膜に炎症がないか?

 とくにブドウ膜炎があると新生血管が形成されていて、これが出血につながり重度の前房出血となる。

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「馬医者のための眼科学」全国公営競馬獣医師協会版を参照。

感謝。

 

 


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