これは学生時代に一条先生に習ったこと。
「疝痛っていうのは、ほとんどの場合、牽引痛だよ」
馬の疝痛をほとんど診たことがなかった私には、そんなもんかな、くらいにしか理解できなかった。
その後、40年。
私は一条先生よりはるかに多くの馬の疝痛を診てきた。
その中で、確認し、確信した。
疝痛っていうのは、多くの場合、牽引痛だ。
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結腸捻転はひどく痛い疝痛の代表だ。
大きな結腸が捻れてひっぱられるので、ひどく痛いのだろう。
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結腸の変位では、さほど痛くないことも多い。
時間が経ってしまって、腸管の浮腫(循環障害・虚血)が進行してしまうこともあるが、それほど痛くない。
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小腸がひどく絞扼される小腸捻転もかなり痛い。
これも、腸管や腸間膜が強くひっぱられるからだろう。
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腸間膜ヘルニア、横隔膜ヘルニア、網嚢孔ヘルニアなどで小腸が絞められて壊死する症例もかなり痛いことが多い。
しかし、さほど強い痛みは持続しないこともある。
それぞれの症例でひっぱられるかどうかに差があるからだと思う。
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すべてが牽引痛ではない。
虚血痛もある。
結腸捻転や、壊死するような小腸閉塞の痛みには、それも加わってはいるのだろう。
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炎症も疼痛を引き起こす。
腸管そのものの炎症もそうだし、腹膜炎も痛みを伴うことがある。
ただし、牽引痛ほどの強さではない。
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胃潰瘍の痛みは・・・・胃粘膜が損傷され、より深いところにある知覚部が胃酸の刺激を受けることによるように思う。
胃炎も起こしている。
仔馬だと、ひどい胃十二指腸潰瘍ができると、小腸の蠕動が止まり、小腸が膨満することもある。
そうなると牽引痛も出てくる。
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便秘は、程度が軽いと痛くない。
痛みを見せるのは、便秘の結果として閉塞が起こるから。
そうなると膨満し、拡張することで牽引痛が出てくる。
ガスなり、内容なりが多少でも抜けると、痛みが消えて、また食べたがる。
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「馬の疝痛のほとんどは牽引痛だよ」
40年以上前に一条先生に教わったことは、馬のひどい疝痛を数多く診てきた私の基礎になってきた。
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このあたりも雪が降った。
あたたかい晩秋だったのだが、積もるほどの雪が降るのは例年より早かった。
これは雪が降る前。
今はモミジも散った。
急に季節が進んだ。