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Channel: 馬医者残日録
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痛いのは”膜”

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馬の疝痛の多くは牽引痛であることを書いた。

牽引されるのは、腸管。

あるいは腸間膜、もしくは腸管を固定している間膜。

これらは、腹膜の連続に覆われている。

臓器を覆っている膜は漿膜と呼ばれるが、腹膜からの連続だ。

痛覚神経の分布密度は知らないが、痛みに敏感なのだろう。

           ー

腹膜そのものも痛覚がある。

直腸検査でどこかを触るととても痛がる状態に陥ることがある。

内臓そのものや、内腔臓器の内側の粘膜面より、外側の漿膜の方が敏感なように思う。

           ー

馬は輸送で胸膜肺炎を起こすことがある。

胸膜炎の馬は、身動きするのを嫌がるような痛みを見せることがある。

胸膜の炎症の痛みなのだろう。

           ー

仔馬に多い細菌性関節炎もひどい跛行を引き起こす。

関節は、骨、軟骨、滑膜、関節包、靱帯、腱、などで構成されている。

関節軟骨が動きの中で接触し、荷重され、摩擦するが、関節軟骨は痛覚はない。

(軟骨は青白くて、半透明でしょ。血行も神経も分布してない。したがって血も出ないし、痛覚もない)

では痛いのはどこか?

最も痛みを感じているのは、滑膜だろうと思う。

           ー

外傷縫合をしていて、最も敏感なのは皮膚だ。

深くまで筋肉が切れていて、それらを縫い寄せ、皮下織を縫い寄せ、あとは皮膚を縫い合わせるだけなので、もう鎮静剤や麻酔も要らないか・・・・

などと思うと、馬が痛がって縫合できず、全身麻酔を延長したり、局所麻酔を追加したりという経験は私たちには日常的。

体を守るために、皮膚には豊富に知覚、痛覚神経が分布し、縫合針を刺されると、大怪我のときでさえ痛い。

皮膚とは、体を包む膜だ。

           ー

長い骨がボッキリ折れるとひどく痛い。

亀裂が入っているだけでも、ただごとではない痛みを見せることもある。

ただ、中手骨や中足骨の顆骨折では完全骨折に到ると痛みが和らぐことがある。

骨も痛みを感じるのは皮質骨でも海綿骨でもなく、骨膜なのだろう。

だから骨膜がそれ以上裂けなくなると痛みが軽減する。

長い骨がボッキリ折れてひどく痛いのは、体の中に骨折端があって体重をかけようとしたり、肢を振ると動くから。

筋肉の中にナイフが入っているようなものだ。

骨膜も、筋膜も、周囲の神経も、皮下織も皮膚も、内側から刺激される。

            ー

馬は痛みに敏感な動物で、わたしたち馬医者は痛みに対応しなければいけないことが多い。

どこがどうして痛いのか、よく考えてみることは診断と治療の質を上げてくれるかもしれない。

          /////////////////

シラカバの芯を切り落とした。

このシラカバは林の中から移植したもので、根付いたら伸びるのがひどく早い。

これ以上高く太くなってから切り詰めると、太い幹を切ることになり樹形が乱れる。

シラカバは芯を止めるとしばらくは伸びが止まるようだ。

 

 

 


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