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Channel: 馬医者残日録
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妊娠末期の腹囲膨満、発汗、チアノーゼ

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朝、分娩予定1ヶ月前の繁殖雌馬の診療依頼。

発汗し、呼吸速迫で、チアノーゼもある、とのこと。

・・・・・一番の推定診断は、消化管破裂だ。

消化管破裂だと母馬は予後不良だし、分娩予定まで1ヶ月以上で分娩徴候もないとなると子馬も助かる見込みはない。

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診断の用意をして待つ。

来院したら、発汗、心拍90、鼻翼開帳呼吸。

口粘膜はかなりのチアノーゼ、舌はどういうわけかもっと紫色。

これはやはり消化管破裂だろうと考える。

血液は、PCV48%、乳酸値5.9mmol/lと悪いが、白血球数は18000/μl。オヤ?

消化管破裂なら極端な白血球減少をしているはずだが・・・・・

超音波画像診断では腹水は増量していない。腹底は妊娠子宮と胎子だけ。左内股部で膨満した小腸が見えた。

胸腔に横隔膜ヘルニアの所見なし。

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このままでは今日1日もたずに死ぬだろう。

なんだかわからないし、このチアノーゼなので、麻酔に耐えられなくて死んでしまうかもしれないけど開腹してみますか?

ということで開腹手術。

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盲腸をガス抜き。

回腸から上位へ小腸を辿っていくが、妊娠子宮に押されていたせいか膨満していて素直に出てこない。

それでも内容を盲腸へ推送して小腸ほぼ全域を空にした。

盲腸は今度は液体で完全膨満した。

どうせ腹圧を減らさなければいけないので、大結腸を引き出す。が、これも妊娠子宮に邪魔されて簡単には出せない。

結腸骨盤曲を切開し、内容を洗い出して、さらに引き出したらやっと全域を創外へ出せた。

できるだけ完全に空にして、盲腸の内容も腹側結腸へ送って減圧できた。

便秘していたわけではないが、腸内容はかなり多かった。膨満がひどい結腸捻転の症例の腸内容より多い!

腹腔には余裕ができた。

麻酔中の血液ガスの数値も改善された。それでも、なぜこんな状態になっていたかはわからない。

そのまま閉腹した。

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覚醒室で気管挿管されたまま自発呼吸している頃の口粘膜と舌の色。

手術前よりかなり良くなってこの色調。

CRTは3秒を超えていたのが、1秒ほどになっていた。

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麻酔モニターで低カルシウムであることがわかり、グルコン酸カルシウムを点滴していた。

術前の血液を午後に生化学検査したら血清マグネシウムも低かったので夕方にはグルコン酸カルシウムとマグネシウムも投与した。

その頃には食欲も飲水欲も出てきていた。

術前の血清カルシウム4.2mg/dl、マグネシウム1.0mg/dl。

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正確な病態が何だったのか確信は持てない。

妊娠子宮の圧迫に加えて、小腸・盲腸・大結腸の膨満が加わり、低カルシウム低マグネシウムによる消化管運動の減弱もあって、馬は苦しくなり、さらに循環性ショックと呼吸性アシドーシスが悪循環に陥ったのだろうか。

珍しい症例だったし、難しい症例だった。

開腹手術、内科療法、いずれもが抜けたり遅れたら、助からなかったと思う。

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しかし、翌日もまた低カルシウム低マグネシウムだった・・・・・・馬は元気良好・食欲旺盛・・・・・

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怒りっぽい。筋肉の痙縮。

それ低カルシウム・低マグネシウムかもしれませんよ。

 

                                

 

 

 


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