調教や競走をしている馬は中手骨・中足骨が球節から割れることがある。
(放牧地でどんなに走り回ってもこういう骨折をすることはまずないことはとても興味深い)
たいていは、外側関節面(外顆)が縦に折れる。
ひどくなっても骨折線は外へ開くので、外顆がはずれてしまうだけで済む。
ところが、内側関節面(内顆)から割れると、骨折線は内側へ開くことなく、螺旋状に近位方向へ伸びていく。
そして、中手骨・中足骨の中央での斜骨折に破綻するか、あるいはさらに近位へ伸びて近位部で横骨折する。
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今まではできるだけスクリュー固定で治してきた。
20頭近くやってきて致命的な骨折に悪化したことはなかったのだが、今年、術後に斜骨折してしまった例を経験した。
難しい判断になるが、プレート固定をもう少し積極的に考えた方が良いかもしれない。
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それで中足骨内顆骨折をスクリューとDCPで内固定した。
発症してすぐなのだが、骨折線は広がっていた・・・・というより吸収像があり、ひょっとすると時間が経っているか?とも見えた。
骨折線は種子骨の頂部を過ぎて伸びていた。
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minimally invasive 最小外科侵襲法と呼ばれる、大きくは切皮しない方法でプレートを皮下に挿入した。
LCPの方が先が尖っていて入れ易いが、DCPでも入れられなくはない。
もちろんLCPとLHSの方が固定力があり、強度があるが、骨折線が伸びていくのを防ぐという点ではDCPでも大丈夫だろう。
背外側へ入れるが、プレートを固定するスクリューの先が、副管骨を押さないような位置にプレートを置かなければならない。
その点では、DCPは入れるスクリューの角度に自由がきくのでLCPにLHSを入れるほど気を使わなくて済む。
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中足骨は中手骨より長い。
14穴のDCPを使った。
かつてDr.Richardsonに、
「螺旋骨折に伸びて骨幹中央での斜骨折や、近位部での横骨折を起こしそうだったらどうしますか?」
と尋ねたことがある。
答えは明快で、
”double plate”
だった。
もう20年ほど前、無知で未熟だった私は、中足骨内顆骨折の馬を手術して、覚醒起立時に近位部の横骨折でダメにしたことがある。
うまくいった経験も、うまくいかなかった苦く、苦しい経験も、そしていろいろな情報も含めて最良の判断をしていきたい。
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雪ふった~