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Channel: 馬医者残日録
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山下と斉藤

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午前中、競走馬の披裂軟骨切除。

2012年の香港でCornell大学のDucharme先生に教わったので、この手術についての考え方と、世界標準の方法を知っているつもりだが、

競走馬の「のど鳴り」の治療法としてはかなり厳しい面がある。

午後は、競走馬の腕節chip fracture の関節鏡手術。

chipと言っても、2.1cm×1.5cmあり、5mm以上の関節面軟骨が一緒に剥がれている。

「騎乗運動まで4ヶ月の休養をおすすめします」

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スポーツを観て泣いた記憶はそんなにないが、ロスアンゼルスオリンピックの山下の金メダルには涙が出た。

世界で圧倒的な力を維持していたのにモスクワオリンピックをボイコットすることになり出られず。

4年後、今度こそ、と誰もが思っていたら、試合中に足を痛めて、歩くのも痛そうで決勝は悲壮だった。

傷めた足を攻めようとしなかったエジプトの巨漢ラシュワン選手も立派だった。

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多くの人が山下がその金メダルで引退すると思っていたが、山下は引退しなかった。

「斉藤ともう一度対戦してやらなければならない」

翌年の全日本選手権決勝は斉藤仁と互角の勝負になり、結局、山下は7年以上誰にも負けることないまま引退した。

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斉藤選手はその後、肘を折られ、膝を怪我をし、リハビリと復活への道も長く厳しく辛いものだったようだ。

しかし、ソウルオリンピックで優勝する。

山下との対戦を避けるために階級を変えてきた強豪たちを破ったロスに続いての連覇だった。

反則技で斉藤の肘を折った韓国選手は仕返しを恐れたのか逃げ回った。

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その斉藤仁さんが亡くなった。

私と同じ年だ。

まだ思い残すことがあっただろうに。

かつての、ドラマのような柔道の名シーンを思い返すとともに、ご冥福をお祈りする。

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ライバルであり、先輩後輩であり、お互いに高めあえる。

美しきこと哉。

 

                         


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