学会も3日目。いいかげん疲れてきたが、私自身の出番は最終日の午後。
午前中は、小動物の骨折治療の基本と最新情報についての講演を聴いた。
講師はコーネル大学の林慶先生。
USAで小動物外科専門医となって、さらにいくつかの大学で教育・指導に当たっておられることは素晴らしい。
林先生には、以前、札幌で外科麻酔学会があったときに馬のセッションとしてUSAの外科専門医制度について講演していただいた。
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今回の講演では、基本に忠実に!を繰り返し述べておられた。
日本では小型犬が圧倒的に多く、それも室内飼育されることがほとんどなので、骨折事故はテーブルから飛び降りたとか、飼い主から落ちたとかによる橈尺骨骨折がとても多いらしい。
実は、USAでも近年は小型犬が増加していると聞いたことがある。
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犬も骨折内固定手術後は、2週間はケージレストさせ、その後、すこしずつ歩かせ始める。
犬はケージに入れておけばほとんどの時間を寝て過ごすので、馬房内でも立って歩き回る馬とはかなり事情が異なる。
馬は体重が重いだけでなく、気性的にも、種の動物としての生活様式でも、骨折の良い患者とは言えない。
同じ大動物でも牛は気性が穏やかで、ほとんどの時間を寝てすごし、骨の形も太くて短かく丈夫で、馬よりははるかに骨折の良い患者だ。
最近は牛の骨折を治療した症例報告を見かけるようになっているのだが、あまりに獣医さんに整形外科の基礎知識がなくて残念に思うことが多い。
いきあたりばったりで、あるいは目の前で骨折した動物を見て、はじめて考えてやってみる。というのは「素人」がすることだ。
それでは失敗した経験談だけが積み重ねられていく。
あるいはうまく行ったとしても、それは幸運に支えられたまねをしない方が良い経験でしかない。
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腕節を屈曲させてキャストを巻くとか、
髄内ピンによる牛の骨折の治療とか、
創外固定とか、
私はナンセンスだと思う。
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基本を学ぶことの大切さをあらためて教わった講演であった。
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