馬は歯の手入れが必要だ、ということが普及し、定期的な整歯や、噛み出しをする馬の歯科治療が行われるようになっている。
しかし、牛については・・・・感心すらもたれていないのが現状だろう。
Veterinary Surgeryに牛の歯科治療についての報告が載っていたので紹介したい。
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Cheek teeth apical infection in cattle : Diagnosis, surgical extraction, and prognosis
牛の臼歯根部の感染:診断、外科的抜去、そして予後
カナダ、ケベック州のモントリオール大学からの報告だ。
彼らは”母国語”はフランス語なんだよな・・・・まあ、英語も何不自由なく使えるのか・・・・・
要約
目的:根部が感染した臼歯の外科的抜去を行った牛の、臨床的所見、治療、結果について報告すること。
研究のデザイン:少数例症例集。
動物:9頭の成牛。
方法:2005年から2017年に外科的に臼歯を抜去して治療した、臼歯の根部感染と診断された牛の診療記録を調査した。
臨床的検査、補助的検査、外科的手技、そして予後をデータとして集めた。
結果:主訴は、下顎の腫れ、食欲低下、そして乳量減少であった。
全体では、7本の下顎臼歯と3本の上顎臼歯が抜去された。
左の歯列が侵されることが多く、7本の臼歯と3本の前臼歯が抜去されていた(n=臼歯7本)。
2頭は外から見てわかる病変はなかった。
X線画像では、全ての損傷歯の根部を取り囲む透過域が認められた。
下顎臼歯は頬切開による歯槽骨プレートの除去、あるいは打ち出しによって抜歯された。
上顎臼歯は、上顎洞フラップをしての打ち出しにより抜歯された。
最もよく分離された細菌は嫌気性菌(6/11)とTruperella pyogenes (3/11)であった。
最も多かった併発症は、歯をそのまま摘出できなかったことと(n=4頭の牛)と術創感染(n=5)であった。
全ての牛は治療後牛群に戻された。
結論:臼歯の外科的抜去が9頭の牛で行われた。術後も病的状態が続くことが多く、動物の生産性についての長期間の結果は得られていない。
臨床的重要性:臼歯の外科的抜去は牛の臼歯根部感染において成功しうる治療である。
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本文中に載っているのはこんな画像。
13年間で9頭だから、よくある症例とは言えないだろう。
しかし、必要なら牛でも抜歯するということだ。
私たちに必要を診断できるか?必要を感じて処置する技術があるか?
たいへんな思いをして1頭を治す気持ちがない?それは問題外だ。
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大動物臨床獣医師をめざした若者たちの夢のあと。
研修センターは順調に破壊されつつある。