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Channel: 馬医者残日録
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1月の未熟仔

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その子馬は、初産で1月半ばに生まれた。

予定日より6日早かった。

体重は40kgない。

立ち上がれず、親の乳を搾って哺乳ビンで与えていたが、それも吸えなくなって2日齢でNICU(新生仔集中管理ユニット治療)のために母仔で連れてこられた。

低体温で脱水あり、低酸素。

持続点滴を始め、尿道カテーテルを入れ、鼻からも胃チューブを入れた。

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来院翌日、私はまず話を聴いたのだが「厳しいな」と思った。

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ブドウ糖、アミノ酸が入った輸液剤を使うようになり、頭を上げられるようになり、翌々日には自力で伏臥できるようになった。

体温も37℃台にはなった。

哺乳ビンから1回50-100mlまた飲めるようになった。

持続点滴は、72時間毎にすべてを取り替えなければならない。

それで、一旦静脈留置カテーテルも外して、哺乳だけで維持できるかやってみた。

しかし、2日ほどでまた脱水が進んだ。

哺乳ビンから飲む量も増えなかった。

初産の母馬は乳が出なくなり、子馬は母乳を嫌いミルクしか飲まなくなった。

母馬はイラつきがひどくなり、邪魔になるだけなので連れ帰ってもらった。

子馬の皮膚テントは延長し、眼は落ちくぼみ、眼瞼内反になり、筋肉は痩せ衰えて、口の粘膜はベージュ色あるいはコーヒー牛乳色。

生まれて1週間目は、朝と夕方に補液した。

後肢の球節あたりから先は浮腫が強くなった。

生まれて8日目、さらにNICU管理と治療を続けるなら、また持続点滴し、血漿輸血もしなければならない。

FPT;Failure of Passive Transfer  受動免疫不全なのだ。

            -

X線撮影して、手根骨、足根骨の骨化が充分でないことも確かめていた。

肺もX線撮影してクリアではなかった。

            ー

あきらめた。

肺は良い状態ではなかった。

心臓は卵円孔・動脈管が開存していたが、それは正常。

前葉や下垂部には硬化部があり、小さい膿瘍もあった。

肺が未熟であったことと、哺乳で誤嚥したのだろう。

BUNも100を超えていた。腎臓は虚血。

消化管も充分動いていたとは思えなかった。気脹している部分があった。

腹腔臓器は黄色みがあった。肝機能も充分ではなかったのかもしれない。

生まれる準備が充分にはできておらず、未熟児としてのNICU管理も充分にはできず、MOF(多臓器不全)に陥った、というところだろう。

今年、最初に観た子馬だった。

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ごろごろと

あちこちで

雪が冷たくて気持ちいいのも元気ならでは。

 

 

          


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