繁殖雌馬の開腹手術をお願いします、と起こされた。
分娩後5日目、腹囲膨満、疝痛重度。
PCV64%、これはひどいなと覚悟して執刀する。
大結腸はチアノーゼがかなりひどい。
ガス抜きして、引っ張りだす。
結腸骨盤曲を切開して内容を排泄させて減圧する。
引っ張り出すまでに180°、内容を捨ててから360°後ろ回りに回して整復した。
色調はかなり良くなった。
結腸動脈沿いの出血と浮腫は重度。
拍動は結腸基部ではしっかりしているが、骨盤曲近くでは微弱。
骨盤曲切開部の粘膜はすでに完全壊死。
・・・・・あきらめましょう。
今年、もう種付け予定のない繁殖雌馬。
哺乳役としての役割なわけだが、順調に回復して哺乳できる可能性はゼロだ。
そして、命も助けられる可能性はほとんどない、と判断した。
剖検。
やっぱりね。これでは生きられない。
結腸基部も、漿膜面から見て筋層にもダメージがあるのがわかっていたので、亜全摘しても助からなかっただろう。
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漿膜面から観た色調が回復しても、粘膜のダメージがあまりにひどく広範囲だと助けられない。
1年に1-2頭あるかないかなのだが、結腸捻転の助けられないひとつのパターンだ。
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この馬は疝痛発見から手術まで1時間半ほどしか経っていなかった。
通常、疝痛発見から3時間以内に来院してくれれば手遅れにならないと思っている。
しかし、捻転の仕方がひどかったのと、発見前から疝痛を起こしていたのだろう。
そして何事にも例外がある。