妊娠末期の空腸捻転
朝、入院馬の治療。 網嚢孔ヘルニアで空腸切除・吻合され、腹腔内出血もあり、重症だった妊娠末期の繁殖雌馬。 なんとか回復して退院できることになった。 ー 雪が降って、除雪もしなければいけない。 その前に電話があった別な繁殖雌馬の疝痛の来院を待ちながらトラクターで除雪する。 ー 来院した繁殖雌馬は、まだ痛い。 しかし、血液所見は悪くない。...
View Article家畜診療技術全国研究集会2020
始発の飛行機で羽田へ。 新型コロナウィルス感染症(新・冠・ウィルス)が懸念されているが、空港は落ち着いたものだった。 東京駅で乗降したのは初めてじゃないだろうか? この集まりには20年以上来ていない。 前回来たときは古びた会場だったが、今回は新しい立派なホールで驚いた。 東京駅から皇居の方へ歩き、有名企業の自社ビルが並んだ中のホール。 1日借りるといくらかかるんだろ?;笑...
View Article新・冠ウィルス
世間は新型コロナウィルス感染症で持ちきりだ。 報道が少し加熱しすぎている気もする。 マスコミの対応もそれを助長している。 ー 新型インフルエンザのときも、最初は隔離、検疫が注目されたが、そのうち市中感染が広がっているのがわかって、患者数を数えるどころではなくなった。 当初恐れられたよりはるかに致死率が低かったのも幸いだった。 ー...
View Article消毒ワゴン
家畜高度医療センターで使っている消毒ワゴンを紹介したい。 以前は、こういうのを使っていた。 ベイスン式消毒のためのもので、洗面器(って最近は言わないよね、じゃあどう呼ぶの?)を2つ乗せ、タオルがかけられるようになっている。 しかし、これに洗浄消毒剤(ポピドンイソジン、クロルヘキシジン)とクロルヘキシジン・アルコール綿と水とブラシを乗せるとけっこう重い。 持ち上げて運ばなければならないので、辛い。...
View Articleなごり雪、そして吊起帯を着けての去勢
17歳の去勢。 あんまり運動もせず放牧されていたらしい。 もう安心して全身麻酔できる歳ではない。 倒す前に吊起帯を着けてみる。 そのことで、馬を慣らすことができ、サイズをあわせることもできる。 そして、そのまま倒馬薬を投与して全身麻酔を始める。 いつもは仰臥にして去勢するのだが、吊起帯を着けているので半仰臥で去勢することにする。 お股の部分が少し邪魔だが、よけておけば去勢できる。...
View Articleなごり雪、そして吊起帯を着けての傍正中斜切開からの麻酔覚醒起立
朝、虚弱新生子馬が来る、という。 しかし、出生して5時間。 起立に介助が必要で、心雑音があっても”異常”とは言えない。 大事なことは、この時間帯なら初乳を充分に飲ませてやること。 歩行にも介助が必要だったが、帰ってもらう。 ー 午前中、予定の腕節chip fracture の関節鏡手術。 どうやら、骨折していたのに移籍したらしい。 損傷はけっこうひどかった。...
View Articleプレート固定の基本と注意点 DCP固定の原理
骨折のプレート固定の原理や基本を知っておくことは大切なのだけど、「骨とは」とか、「骨折とは」とか、「内固定器材について」とか、基本から書いた文章はつまらない。 それを読んだからといってプレート固定ができるようになったりしない。 水泳や自転車乗りと一緒かもしれない。 しかし、より速く泳ごうとしたり、自転車で転ばないようにするためには、ときどき原理に戻って考えた方が良い。...
View Articleプレート固定の基本と注意点 骨の強度とscrew
骨は体を支える芯の役割を果たしている。 歯を除いて、体の中でもっとも硬い組織だ。 ヒトの脛骨を短く切ると、自動車を支えるほどの強度がある。 長い骨(長骨)はパイプ状の構造をしていて、その皮質骨に整形外科様のscrewをしっかり効かせると250kgの引き抜きに耐える。 ヒト3人分の体重に耐えると考えていい。 図はいずれも、小動物骨折内固定マニュアル からお借りした。...
View Article子牛の難しい脛骨粉砕骨折 N.M.C.
海外の先生の講習で、症例の画像の端にN.M.C.と書かれていることがある。 Not My Case. 私の症例ではありません。との表示。 症例提供者への感謝であるかもしれず、「オレならもっとうまくやる」かもしれない;笑 - 私が休みの日に子牛の脛骨骨折が来て、内固定手術した、とのこと。...
View Articleプレート固定の基本と注意点 prebending
骨折プレート固定の実習をしていると、 「プレートスクリューは、骨折部に近いところから入れますか?端からですか?」 と訊かれることがある。 その問いに答え、その理由を理解してもらうには、ちょっと遠回りしなければならない。 - 骨折部をしっかり圧迫固定できる点がCompression Plate の利点だ。 DCPでも、LCPでも。...
View Articleプレート固定の基本と注意点 prebending の応用と実践
プレートを利用したcompression も、対側を圧迫するためのprebending もかなり観念的。 単純な横骨折や短斜骨折だとcompression が極めて有効だろうが、そんな単純な骨折は多くない。 ただし、compressionとprebending の原理を知ってうまく使えば、より安定した強固なプレート固定ができる、はず。...
View Articleプレート固定の基本と注意点 prebendingの具体的方法
では、prebendingは具体的にどうするか? これは基礎実験から結論が出ている。 鈍性に湾曲させたのではダメで(a)、骨折部の1箇所で曲げる(b)。 そして、骨折部に近いscrew hole からscrewを入れていく。 - 極端に曲げる必要はない。 骨折部の上でわずかにプレートが骨から浮いている状態で良い。 完全にDCPが骨に沿うようにcontour...
View Articleプレート固定の基本と注意点 骨折部を貫通するscrewの重要性
compression とprebendingの概念と重要性と具体的方法について書いた。 しかし、骨折部を貫通するscrewを入れておけば、骨折部の固定はさらに安定したものになる。 それを示したのが上図(「新小動物骨折内固定マニュアル」より)。 DCPもLCPも、皮質骨screwを傾けて挿入することができるようにscrew hole...
View Article医療のキャパシティー 選別と集中の重要性
朝、子宮穿孔を疑うとのことで、分娩翌日の繁殖雌馬が来院するという。 予定していた関節鏡手術を延期してもらって、開腹手術と腹腔洗浄の準備をして待つ。 来院したら、チアノーゼ。 子宮穿孔だと腹膜炎とトキシンショックの進行は速くないことが多いので、分娩翌日にしては悪すぎる。 血液検査で、白血球数3,300/μℓ、PCV70超、乳酸値7。 超音波検査で大量の腹水とフィブリンと異物が腹腔内に見えた。...
View Articleプレート固定の基本と注意点 骨折部の安定の必要性
骨折部を安定させることがそれほど重要か?と思われるかもしれない。 「大きくずれないならいいじゃない。キャスト固定だって骨折が治ることもあるんだし。・・・・」 それへの反論の根拠がこれ。 折れた骨をつなぎなおそうとするのも細胞。 わずか5μmでも引張られれば、ひとつの細胞にとっては耐えられる長さではなく、細胞は壊れてしまう。...
View Articletriage トリアージ
Triage 「トリアージ」とそのまま使われることが多いようだ。 複数、あるいは大量の傷病者が居るときに治療の優先順位を決める作業。 限られた医療資源で最大の救命効果をあげるために行う。 - 妊娠末期の結腸捻転の手術の最中に、分娩翌日の疝痛の依頼。 超音波で腹部を観たか? 腹水はあった。穿刺したが採れなかった。 痛いの?かなり痛い。 待たすと思うけど連れて来て。...
View Article救えない結腸捻転のひとつのパターン
繁殖雌馬の開腹手術をお願いします、と起こされた。 分娩後5日目、腹囲膨満、疝痛重度。 PCV64%、これはひどいなと覚悟して執刀する。 大結腸はチアノーゼがかなりひどい。 ガス抜きして、引っ張りだす。 結腸骨盤曲を切開して内容を排泄させて減圧する。 引っ張り出すまでに180°、内容を捨ててから360°後ろ回りに回して整復した。 色調はかなり良くなった。 結腸動脈沿いの出血と浮腫は重度。...
View Article虐待 abuse
朝、出勤したら外傷縫合が始まるところだった。 これはひどい。 母馬にやられたの? らしいです。 母馬が突然、子馬を襲ったのだ。 母馬は2産目。とくに虐待するそぶりはなかったとのこと。 探して持ってきてくれていた、ちぎれてしまっていた皮膚を張り付けるように縫合した。 そうしないと欠損部位が大きすぎる。 皮膚は生着は望めない。...
View Article癒着部を元にした空腸捻転
分娩後の繁殖雌馬。 開腹手術歴があり、前回の手術後もしばしば疝痛をしている。 前回の手術は上位空腸炎だったらしい。 私は、寝入りばなに起こされて・・・・思い出している暇もない。 牛の難産と繁殖雌馬の疝痛が重なってしまったとのことで・・・・馬の開腹を執刀する。 ー その繁殖雌馬はひどく痛くて検査も十分にはできなかったとのこと。 開腹したが、結腸捻転じゃない・・・・...
View Article外傷の季節
馬房の中で中足骨部を怪我した2歳。 後肢の内側だし、全身麻酔して縫合する。 腫れているし汚れていたが、洗浄したらそれなりにきれいになった。 一部は骨膜も破れて、白い骨が見えている。 きれいに縫えたが・・・・・ - 牧柵を突き破った1歳馬。 馬の裂傷としてはめずらしく直線状。 たいていはかぎ裂きになっている。もちろん、かぎ裂きより直線状の傷の方が癒合しやすい。...
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